AIの生成した画像は鑑賞にたえうるか？
AIピカソに宗教画を描いてもらった

前回、AIの描いた絵の紹介が好評だったので、さらにAI画伯の描いた絵を紹介していきます。
テーマは前回と同様に「有名画家の描いたキリスト」です。
AIは過去に描かれたイメージをデータベースとして参照するので、「有名画家の絵」とか「キリストの絵」など、データが豊富にあるもののほうが、誰も見たことのないものより上手に描けるようです。
では、ご覧ください。

AIが描いたミュシャ風のキリスト

まずは日本で大人気のアルフォンス・ミュシャです。
AIのミュシャが描いたのは、少女漫画っぽいキリストです。
正確にいえば、ミュシャが少女漫画っぽいのではなく、日本の少女漫画がミュシャの影響を強く受けているのです。
次に、本物のミュシャが描いたキリストの絵も見てみましょう。
AIはさまざまなイメージを合成しているだけに、全体の統一感では本物が勝ります。

AI「Stable Diffusion」が生成した
《ミュシャ風のキリスト》
（「AIピカソ」使用）

ミュシャ《受難》

AIが描いたゴーギャン風のキリスト

AIゴーギャンのキリストは、場所がタヒチっぽいことを除けば、かなりよくできています。よく見ると指の表現がおかしいような気もしますが、ご愛敬です。
では、本物のゴーギャンが描いたキリストと比べてみましょう。
あれ？　もしかしてAIのほうが良かったりしますか？

AI「Stable Diffusion」が生成した
《ゴーギャン風のキリスト》
（「AIピカソ」使用）

ゴーギャン《黄色いキリスト》

AIが描いたルソー風のキリスト

アンリ・ルソーは独特な絵で有名ですが、AIルソーもユニークな絵になりました。キリストの腕はなぜか３本になり、磔にされているような、木にぶらさがっているような構図です。
また、股間を隠すバナナの皮がありますが、なぜか足の間が背景とは別の色で塗られているため、剣か何かのように見えます。本物と比べると、全体的に描き込み不足です。

AI「Stable Diffusion」が生成した
《ルソー風のキリスト》
（「AIピカソ」使用）

ルソー《イヴ》

AIが描いたゴッホ風のキリスト

AIゴッホは、きちんと後光を背負ったイケオジのキリストを描きました。
たしかにゴッホっぽいタッチです。どことなくゴッホの自画像にも似ています。

AI「Stable Diffusion」が生成した
《ゴッホ風のキリスト》
（「AIピカソ」使用）

ゴッホ《灰色のフェルト帽をかぶった自画像》

AIが描いたモネ風のキリスト

なるほど、これはモネのキリストです。後光がないので、ヒッピーのおじさんにも見えますが、表情にキリストの高貴さもうかがえます。やはりモネの自画像に似ています。

AI「Stable Diffusion」が生成した
《モネ風のキリスト》
（「AIピカソ」使用）

モネ《自画像》

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AIが描いたルノワール風のキリスト

ふくよかな女性を好んで描いたルノワールだけに、ふくよかなキリストが出力されました。バラ色の頬やくちびるは、まさにルノワール。正直、AIの画力に驚きます。

AI「Stable Diffusion」が生成した
《ルノワール風のキリスト》
（「AIピカソ」使用）

ルノワール《ガブリエルとジャン》

AIが描いたピカソ風のキリスト

ピカソは力強い目に特徴があります。また、目は正面からの視点なのに、鼻が斜めからの視点になっているところに、ピカソのキュビスムっぽさが感じられます。口のあたりの歪みもピカソらしいですね。

AI「Stable Diffusion」が生成した
《ピカソ風のキリスト》
（「AIピカソ」使用）

ピカソ《カルメン・デ・カルメン》（翠波画廊にて販売）

AIが描いたダリ風のキリスト

ダリはディテールこそ奇抜ですが、デッサンなどはかなり写実的です。黄金色の光も、派手好みだったダリの特徴をよくとらえています。

AI「Stable Diffusion」が生成した
《ダリ風のキリスト》
（「AIピカソ」使用）

ダリ《ダリニアの馬：春の馬》（翠波画廊にて販売）

AIが描いた藤田嗣治（レオナール・フジタ）風のキリスト

細い線には藤田嗣治らしさがありますし、たしかにキリストの絵ですが、藤田嗣治にしては生硬な感じがします。AIにはよくあることですが、指のあたりは合成に失敗しています。

AI「Stable Diffusion」が生成した
《藤田嗣治風のキリスト》
（「AIピカソ」使用）

藤田嗣治《猫と自画像》（翠波画廊にて販売）

AIが描いた葛飾北斎風のキリスト

AI北斎は完全に浮世絵です。顔はキリストですが、髪のかんざしや服装を見ると、女性の絵がまじってしまっているような気がします。おそらくキリストの長髪を葛飾北斎の絵で解釈すると、女性像にあてはまってしまったのでしょう。

AI「Stable Diffusion」が生成した
《葛飾北斎風のキリスト》
（「AIピカソ」使用）

葛飾北斎《風流無くてななくせ（ほおずき）》

AIが描いたアンディ・ウォーホル風のキリスト

これはまさに。

AI「Stable Diffusion」が生成した
《ウォーホル風のキリスト》
（「AIピカソ」使用）

ウォーホル《マリリン・モンロー31》（翠波画廊にて販売）

画像生成AIが描く未来

出典：Denis Sexy IT X Нейросети и Блендер

画像生成AIは、テキストから画像を生成するだけでなく、手描きのラフなスケッチを上手に仕上げたり、描きかけの絵から続きを生成したりもできます。
たとえば、画像生成AI「DALL.E 2」にフェルメール《真珠の耳飾りの少女》の続きを描かせたところ、次のようになりました。違和感は少ないですね。
ちなみに、「DALL.E 2」の名前は、画家ダリと、CGアニメのロボットSF映画『ウォーリー』（WALL-E）とをかけあわせたものです。

ネスレのブランド「ラ・レチエール」

また、フェルメールの絵画《牛乳を注ぐ女》をパッケージデザインに採用しているネスレの乳製品ブランド「ラ・レチエール」も、同絵画の続きを「DALL.E 2」に描かせて、その模様を動画公開しました。AIが提出した候補の中から人間が選んでいるのですが、地味な料理のシーンが、まるで実演販売みたいになりました。