2021年上半期のアートマーケットを振り返る
~バンクシーからNFTアートまで
2021年10月14日、バンクシーを一躍有名にしたあの作品が、3年ぶりにオークションに出品され、バンクシー作品歴代最高価格の約29億円(手数料込)で落札されました。
前回は1億6200万円で落札されたので、3年間でおよそ18倍になったかたちです。
バンクシー作品が最高価格を更新するのは今年2度目です。
今回、記録を更新したこの作品は、もともと《風船と少女》(Girl with Balloon)というタイトルでしたが、バンクシー自身が額に仕込んだシュレッダーで前回の落札直後に自動的に半分以上が細断され、それに伴って《愛はごみ箱の中に》(Love Is in the Bin)と改題されたものです。
ちなみに、新しいタイトルは、もう一つのバンクシーの有名作品である《愛は空の中に》(Love Is in the Air)にちなんだものです。
なお「Love Is in the Air」は、もともと「多くの人々が恋に落ちている」状態を指す英語のフレーズですが、バンクシーは火炎瓶を投げる暴徒の若者に、武器の代わりに花束を持たせることで、愛の花束が空を舞う様子を表現しています。
バンクシー《愛はごみ箱の中に》(Love Is in the Bin)29億円で落札
バンクシー《愛は空の中に》(Love Is in the Air)
2021年のアートマーケット
バンクシーだけでなく、2021年のアート市場は全体に好調を続けています。
前年の2020年は人類がcovid-19に初めて遭遇し、その脅威に恐れおののいた年でした。
観光やイベントの市場は冷え込み、アートマーケットもその例外ではありませんでした。
しかし、各国の対策によってcovid-19の流行は抑えられ、2021年上半期のアートオークション市場はそのすべてを回復したかに見えました。
アートプライスが提供するアートオークション総売上高の推移を見ると、2020年上半期と比べて、2021年上半期は売り上げが3倍以上に伸びています。
その売上高は2019年上半期と同水準で、コロナショックのあった2020年上半期と、リーマンショック翌年の2009年上半期だけ、売り上げが極端に落ちていることがわかります。
コロナショックの2020年上半期を特例として除外すれば、2021年上半期のアートオークション総売上高は、2019年上半期に比べて約3%増加しました。
オンラインオークションが市民権を得た
2021年上半期のアートマーケットで特筆すべきできごとは、オンラインオークションの伸長です。サザビーズ、クリスティーズ、フィリップスの3大オークションは、258のアートオークションのうち、半数以上にあたる133をオンラインのみでの開催としました。
ただし、オンライン限定オークションでは高額商品はあまり落札されない傾向があるので、その売上高は全体の10分の1でした。
オンラインオークションとともに顕著な伸びを見せているのが、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)と呼ばれるデジタルの購入証明書が付属した作品群です。
NFTオークションの売り上げは、オンラインオークションの売上高の3分1を占めています。セカンダリーアート市場全体から見てもNFTの売り上げは2%にあたります。
2021年上半期に落札された単一のNFT作品の最高金額は約75億円で、オンラインオークションの史上最高額となりました。
これはデジタルアーティストであるビープル(Beeple)の作品《Everydays – The First 5000 Days》(毎日 – 最初の5000日間)が叩き出した記録で、存命アーティストの作品落札価格として歴代3位を記録しました。
バスキアとバンクシーと奈良美智の共通点は?
2021年上半期アートマーケットのもう一つの特徴は、戦後(1945年以降)に生まれた現代美術作家の売り上げの大幅な増大です。同カテゴリは、2019年上半期と比較して50%も売り上げが増加して、現在の世界のアートオークションの総売上高の23%を占めています。
戦後生まれの現代美術作家で最もよく売れたのは、ジャン=ミシェル・バスキア(1960-1988)です。2021年上半期のオークション市場におけるバスキアの売上高は約3億ドルです。これはパブロ・ピカソの約3.5億ドルに次いで、全アーティストの2位にあたります。
バスキアの次に来るのがバンクシーです。素性不明のバンクシーですが、一説によると1974年生まれで、戦後生まれの現代美術作家のカテゴリに入れられています。
もっとも2021年時点で75歳以下のアーティストは全員戦後生まれなので、バンクシーも当然その一人に入るのは間違いないでしょう。
2021年上半期のオークション市場におけるバンクシーの売上高は約1.2億ドルで、バスキアの半分以下ですが、全アーティストの中で5位に入る人気ぶりでした。
アートオークションにおける売上高の推移を見ると、バンクシーの人気が2018年を皮切りに急激に高まったことがわかります。
この2018年は、オークションで落札されたバンクシー作品《風船と少女》が、額に仕込まれたシュレッダーで落札直後に細断される事件がありました。
通常であれば作品の価値は無に帰すところですが、細断がバンクシー自身のしわざであったこともあり、《愛はごみ箱の中に》と改題された同作品は、3年後に再び競売に出品されて、バンクシー作品の最高価格となりました。
日本でも2021年12月5日まで、東京・天王洲の寺田倉庫G1ビルにて「バンクシーって誰?」展が開催されるなど、その人気はとどまるところを知りません。
戦後生まれの現代美術作家の3位は奈良美智で、売上高は約8600万ドルです。全アーティストで見ると9位にあたります。
ちなみに、奈良美智の2021年上半期のオークション売上の88%は香港からもたらされています。今や香港は全世界の美術品オークション市場の売り上げの11%を占める一大マーケットに成長しました。
2021年上半期の世界の美術市場の売上高ランキング(artprice調べ)
1. パブロ・ピカソ:約3.5億ドル(2020年1位)
2. ジャン=ミシェル・バスキア:約3億ドル(2020年6位)戦後生まれ
3. アンディ・ウォーホル:約1.5億ドル(2020年7位)
4. クロード・モネ:約1.3億ドル(2020年74位)
5. バンクシー:約1.2億ドル(2020年20位)戦後生まれ
6. 趙無極(ザオ・ウーキー):約1.1億ドル(2020年3位)
7. ゲルハルト・リヒター:約9800万ドル(2020年12位)
8. サンドロ・ボッティチェッリ:約9400万ドル(2020年圏外)
9. 奈良美智:約8600万ドル(2020年18位)戦後生まれ
10. 張大千(チャン・ダイチェン):約8200万ドル(2020年4位)
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