アートコラム

写真によるアート・ジャケット その2

2020/09/08

近年、写真による表現もまた芸術であると認められる傾向が強くなってきました。
たとえば、ドイツの写真家であるアンドレアス・グルスキーの作品≪Rhein II≫(1999年)は、2016年のクリスティーズ・オークションにて、434万ドル(約3億3600万円)で落札されました。目下のところ写真作品の最高価格です。
写真もまた絵画にひけをとらない芸術作品と考えられるようになったのです。
今回も引き続き、ジャケット・アートに使われた写真を見ていきましょう。

 

 

現代アーティストと政治

Babes in Toyland『Fontanelle』
1993年(シンディ・シャーマン)

アンドレアス・グルスキー≪Rhein II≫が記録更新する以前の、写真作品の最高価格はアメリカの女性写真家シンディ・シャーマンの≪Untitled #96≫で389万ドルでした。
コスチュームを身にまとったセルフ・ポートレイトで有名なシンディ・シャーマンは、フェミニズムのメッセージが強い政治的な作風で知られています。
そんな彼女は、アメリカの女性パンクバンドのベイブズ・イン・トイランド(おもちゃの国の赤子たち)のセカンド・アルバム『ファンタネル』のジャケット・アートを手掛けています。彼女たちの音楽もまた、旧来の女性のイメージを覆すものだからでしょう。

 

ちなみに、アルバム・タイトルのファンタネルとは「泉門」――生まれたばかりの赤ちゃんの頭蓋骨が、産道を抜けてこられるようにきっちりと合わさっていず、脳がむきだしになっている部分を意味します。
ジャケットの写真も、こわれた玩具の人形という不気味なもので、ベイブス・イン・トイランドというバンド名ともよく合っています。
余談ですがシンディ・シャーマンは、レコード・ジャケットにロバート・ラウシェンバーグを起用したアート系ミュージシャンのデヴィッド・バーンとの交際でも知られています。

 

 

Day & Taxi『Live in Shenzhen, Shanghai and Taipei』
2005年(アイ・ウェイウェイ)

政治的なメッセージを発する現代アーティストといえば、中国の反体制アーティストのアイ・ウェイウェイの名前を忘れるわけにはいきません。
アイ・ウェイウェイは、ニューヨークに10年以上住んでパフォーマンスアートなどを制作してきました。
1993年、父親の病気のために中国へ戻ったアイ・ウェイウェイは、人権活動家を支援したり、政府への批判を行ったりしたことから、中国政府に自宅軟禁されるなどの迫害を受けました。その後、警察官から暴力を受けて入院したことなどもあり、現在はドイツに移住しています。
スイスのジャズバンド、デイ&タクシーは、中国でのライブを録音したアルバムを発表するに際して、アイ・ウェイウェイにジャケット・デザインを依頼しました。
中国政府の人権侵害に対して、アーティストとして異議を申し立てるアイ・ウェイウェイに、西欧のインテリが共感したのです。
横向きに使われた無機質な建物の写真に、中国の不穏さが浮かび上がります。

 

人気アーティストと人気ミュージシャンの競演

Red Hot Chili Peppers『I’m With You』
2011年(ダミアン・ハースト)

現代アーティストによるアート・ジャケットといえば、自らもバンドを結成しているダミアン・ハーストが有名です。
ダミアン・ハーストは、イギリスのインディーロック・バンドのジ・アワーズのジャケットを数多く手掛けていますが、最も有名なのは、アメリカの大人気バンド、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの2011年のアルバム『アイム・ウィズ・ユー』でしょう。
通常は忌み嫌われるハエをモチーフに、薬のカプセルのピンク色を一点だけ配したこの写真は、モチーフや構図や色使いの秀逸さが、いかにもダミアン・ハーストであり、デザイン的にも優れています。

 

Lady Gaga『ARTPOP』
2013年(ジェフ・クーンズ)

ダミアン・ハーストと並ぶ人気現代アーティストのジェフ・クーンズも、アート・ジャケットを手掛けています。
2012年にアメリカの雑誌「コンプレックス」が発表した「存命芸術家の長者番付」によれば、資産額1位はダミアン・ハーストで10億ドル、2位はジェフ・クーンズで5億ドルとなっていました。
この二人は作品を発表するたびに話題になる現代アーティストの双璧です。ちなみに、日本からは6位に村上隆が1億ドルでランクインしていました。
さて、ジェフ・クーンズがデザインしたのは、音楽業界では常に話題の的となるレディー・ガガの2013年のアルバム『アートポップ』のジャケットです。
クーンズの持ち味のド派手なポップさが、レディー・ガガの個性とよく合っています。

 

物議を醸す扇情的なレコード・ジャケット

ジェフ・クーンズによるレディー・ガガのアルバム・ジャケットは、2010年代だから許されるようなもので、1980年代であれば発禁処分になりかねません。
1984年、ドイツのヘヴィメタルバンドのスコーピオンズは、9枚目のアルバム『禁断の刺青』に、エロチックな写真で有名なヘルムート・ニュートンの作品を使用しました。
このアルバムはアメリカでも売れて、彼らに国際的な名声をもたらしましたが、アメリカに並んだレコードのジャケットは、ドイツ盤とは異なり、バンドメンバーが並んだだけのものに変更されていました。
アメリカでレコードを数多く売る小売店のウォルマートが、ヘルムート・ニュートンのエロチックな写真では棚に並べることができないとクレームをつけたからです。
いま見ると、なんということもないように感じられるかもしれませんが、そういう時代もあったのです。

 

Scorpions『Love at First Sting』
ドイツ盤1984年(ヘルムート・ニュートン)

 

Scorpions『Love at First Sting』
アメリカ盤1984年(ヘルムート・ニュートン)

 

近年の流行は写真と絵画のコラボレーション

最後に紹介するのは、今をときめく人気アーティストのカウズです。
カウズはこれまでに5組のミュージシャンのアルバム・ジャケットを手掛けていますが、そのうちの2組が日本人ミュージシャンのものです。ユニクロとのコラボレーションでも有名なように、カウズは日本でも人気が高いのです。
今回ご紹介するのは、スウィート・ロボッツ・アゲインスト・ザ・マシーンの2003年のリミックス・アルバム『RE:TOWA TEI』です。
アルバム名に「TOWA TEI(テイ・トウワ)」と入っているのは、スウィート・ロボッツ・アゲインスト・ザ・マシーンが、テイ・トウワの別名義だからです。
テイ・トウワといえば、本人名義のアルバム『LUCKY』において、あの草間彌生をジャケット・デザインに起用したように、現代アートへの造詣が深いミュージシャンです。
このリミックス・アルバムではオリジナル・アルバム『TOWA TEI』の写真にカウズの絵を組み合わせた、ユニークなデザインに挑戦しています。

 

SWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINE
『TOWA TEI』
2002年(タイクーングラフィックス)2ndアルバム

 

SWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINE
『RE:TOWA TEI』
2003年(カウズ)リミックス・アルバム

 

余談ながら、スウィート・ロボッツ・アゲインスト・ザ・マシーンは、2018年に16年ぶりのサード・アルバム『3』をリリースしました。
タイトルの『3』は、元・電気グルーヴの砂原良徳とお笑い芸人のバカリズムを新たにメンバーに加えて、3人で作った3枚目のアルバムに由来します。
ジャケット・デザインはファースト・アルバムのパロディで、新進気鋭の現代アーティスト五木田智央(ごきたともお)が担当しました。

 

SWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINE
『SWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINE』
1997年(タイクーングラフィックス)1stアルバム

 

SWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINE
『3』
2018年(五木田智央)3rdアルバム

 

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