アートコラム

藤田嗣治と5人の妻

2020/09/29

藤田嗣治は興味深いエピソードに事欠かない画家です。
まず、藤田は生粋の日本人ではありますが、1955年、69歳のときにフランス国籍を取得し、日本が二重国籍を認めていないために、そのまま日本国籍を捨てています。
さらにカトリックの洗礼を受けて、レオナール・フジタという新しい名前を受けています。つまり、日本人として生まれ、フランス人として亡くなったのです(同様の例として、ロシア人として生まれフランス人として亡くなったシャガールなどがいます)。
さらに、藤田は生涯に実質的に5回の結婚をしています。この数字は『タイタニック』の映画監督ジェームズ・キャメロンや、作家の高橋源一郎と同じで、芸術家の自由奔放な精神がうかがえます。
藤田の5人の妻は、日本人2人にフランス人3人でした。国際的な画家である藤田は、交際相手も一つの国に縛られなかったのです。彼女たちはどのような人だったのでしょうか。

 

 

当時としては珍しい恋愛結婚

藤田が生まれたのは1886(明治19)年で、日本でいえば石川啄木や萩原朔太郎と同い年に当たります。
4人兄弟の末っ子であった藤田は、子供の頃から絵が好きで、1905年に東京美術学校(現・東京藝術大学美術学部)西洋画科に入学します。
卒業後、芸術の中心と言われたフランスへの留学を夢見ますが、学業成績があまり良くなかったために官費で留学することができず、3年ほど日本でくすぶります。
この間に、女学校の美術教師であった鴇田登美子(ときたとみこ)と大恋愛をして、1912年に正式に結婚しました。
しかし、フランス留学の夢が捨てられなかった藤田は、父親に頼んで学費を工面してもらい、1913年に3年間だけの約束で渡仏します。当時は留学費用が高額だったため、夫人同伴とはいかず、単身での留学となりました。

そしてご存じのように、藤田のパリでの生活は3年では終わらず、結果として結婚はそのまま破綻してしまいます。
1916年、父親との約束であった3年間の留学期間を終えた30歳の藤田は、しかし、パリで画家として認められないうちは帰国できないと思い、留学を継続するむねを父に手紙で書き送ります。そのための条件として、生活費を自分で稼ぐことも伝えました。
このことは登美子との約束も破ることになり、結局、二人は離婚することになりました。画家として成功するまでは日本に帰らないと決心した藤田は、妻よりも絵を選んだのです。

 

「ル・ドーム・モンパルナス」
1920年代エコール・ド・パリの画家たちが集ったことで有名

後に離婚になったとはいえ、藤田と登美子との間には深い愛情がありました。
その証拠に、登美子の生家には、藤田が3年間のフランス留学の間に登美子に送った179通の手紙や葉書が今もなお残されています。
メールやチャットのない時代ですから、手紙を書いて郵便局で送付手続きをするのは手間がかかるにもかかわらず、藤田は平均すると月に5通もの手紙を妻に書いて送っていました。
渡仏前に新婚の藤田の描いた風景画が、登美子の生家で見つかったことが2019年2月にニュースになったほどに、登美子の家には今もまだ藤田の痕跡が残っています。

 

フランス人女性との結婚が成功のきっかけ

日本に残した妻と離婚した藤田は、現地で公私に渡るパートナーを見つけます。それが2番目の妻となるフランス人モデルのフェルナンド・バレエでした。
フェルナンドという現地人の協力者を得たことで、藤田はシェロン画廊と契約を結ぶことができ、初めての個展も開催されます。
この個展は、著名な評論家の賛辞を受けたこともあり、好評のうちに終わりました。そして、藤田の絵は徐々に売れ始めるようになりました。
藤田の成功の背景として、フランス人妻フェルナンドの存在を抜かすことはできません。
この頃、藤田はマチスらの始めたサロン・ドートンヌに毎年数多くの作品を出品しています。1919年には6点の出品すべてが入選し、旋風を巻き起こしました。
当時、パリには多数の外国人画家がいましたが、若くして流行画家となったという意味で藤田にかなうものはいないでしょう。

 

しかし、画家としての成功に反して、藤田とフェルナンドとの仲は冷えていきました。貧乏画家だった時代を支えたフェルナンドは、成功した藤田と考え方が合わなくなってきたのです。
藤田は外で他の女性と交際するようになり、フェルナンドも他の画家と浮気をして、結婚生活は破局します。

 

 

2度の離婚後は、若い女性と付き合う

藤田嗣治『子供十態:雪ん子』
1929年 銅版画

糟糠の妻のフェルナンドと別れても、社会的に成功した藤田は相手に困りませんでした。1924年、38歳の藤田は、お雪(ユキ)と名づけた21歳のリュシー・バドゥと暮らし始めます。このユキは、1929年に藤田が日本に凱旋帰国したときに連れて帰った3人目の妻です。
しかしユキとの暮らしも長くは続きませんでした。ユキが、シュールレアリスムの詩人ロベール・デスノスと付き合うようになったからです。この不倫は、藤田も公認のものだったようで、藤田自身も新たな恋人マドレーヌと付き合うようになりました。
1931年、45歳の藤田は21歳の赤毛の踊り子マドレーヌ・ルクーを連れて、南米へ旅行に出かけます。一説にはユキと別れるためだとも言われています。
2年間かけて夫婦で南米を旅した藤田ですが、旅費がなくなったので、お金を作るために、1933年に再び日本に帰国します。その後は1939年まで6年間、アトリエを建てて日本で暮らしました。マドレーヌは日本でシャンソン歌手として売り出されたそうです。

 

しかし、日本はマドレーヌにとってまったくの異国でした。日本に来てから2年後の1935年、ホームシックにかかったマドレーヌはパリに帰国し、それから1年もの間、二人は分かれて暮らしました。
翌1936年、ようやく再来日したマドレーヌでしたが、3か月後に麻薬の過剰摂取で急死します。
藤田がマドレーヌと正式に結婚していたかどうかはわかりません。フランスは日本と比べて恋愛に寛容な文化で、現在ではカップルの半分近くが、正式な結婚ではなく事実婚を選んでいるくらい、正式な結婚にはこだわらないのです。

 

いずれにしろ、独身となった藤田は日本で新たな妻を求めます。マドレーヌが亡くなった年の暮れ、50歳になった藤田は25歳の堀内君代と結婚しました。これが藤田の5番目にして最後の妻です。
文化の同じ日本人の妻を得て、藤田はようやく平穏な私生活を送れるようになります。君代夫人との生活は、1968年に藤田が81歳で亡くなるまで、31年間続きました。
君代夫人は、藤田が日本を捨ててフランスに移住したときも当然ついていきました。
晩年の藤田は、自分の死後も君代夫人が生活に困らないようにと、売却のしやすい小さな絵をたくさん制作していました。それらの絵は現在「君代コレクション」と呼ばれて、一般の愛好家の宝物になっています。
藤田から日本画壇の冷たさを聞いていた君代夫人は、藤田の死後も日本美術界と距離を取り続けました。藤田嗣治の再評価がなかなか進まなかったのは、君代夫人が藤田の作品の、日本への貸し出しや利用を拒否していたからだという話があるほどです。
その君代夫人も2009年に98歳で亡くなりました。5回結婚して一人も子供を残さなかった藤田ですが、その絵はいつまでも、見た人の心に残り続けるものとなっています。

 

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