資産運用コンサルタント
林敬一氏のコラム

Vol.5 絵画と資産運用 その2

2014/06/07

前回から「絵画と資産運用」をテーマにしたシリーズを開始いたしました。初回は資産運用の一つとして絵画あるいはアートがどの程度市民権を得ているかをみてみたところ、日本ではほとんど取り上げられないのですが、欧米では十分に市民権を得ていることを確認しました。資産運用の専門家である私は自他ともに認める数字ヲタクですから、それを数字の上で確認しないと気が済みません。そこでネット上のサイト数が日本語と英語でどれくらい差があるかをみなさんにお示ししました。アートの世界は数字で推し測ることをしにくい世界ですが、今後もなるべくやさしい形でときおり数字を使うことにいたします。

さて資産運用ときいて、みなさんは何を思い浮かべられますか?

日本では資産運用イコール株式投資というのが通り相場です。そして株式投資で儲けるということは株の値上がり益を得ること、つまり「キャピタルゲイン」を得ることを指します。ですので、もし絵画に投資するのであれば、当然値上がり益を得るのが最大の目的になりそうです。

前回日本のバブルの頂点で「絵画投資-究極の資産運用」という本が出版されたというお話を書いています。その本の内容も最大の焦点は、「どの作家の作品が値上がりするか」という点でした。株式の銘柄選び同様、今後値上がりの見込める作家と作品を予想しているのです。一般的に投資の世界ではそうした予想ほど難くあてにならないものはありません。それが当たるくらいなら誰だって簡単に大金持ちになれるはずなのですが、現実は投資で大儲けしている人などほとんどいません。

では、アートを資産運用の対象とすることが市民権を得ている欧米では資産運用の世界は一体どのようになっているのでしょうか。資産運用で欧米と日本が最も異なる点は、日本では

資産運用=株式投資=キャピタルゲイン狙い

という図式ですが、欧米ではそうではないということがまず挙げられます。

キャピタルゲインでなければ何を目的にするのか。資産家にとって最も重要な運用の目的はキャピタルゲインではなく、コンスタントな現金収入を得ることです。元本が十分にあればそれ以上増やすより元本が生み出す現金収入、つまりインカムゲインを得ることを重視します。

日本では最近でこそ金利が低いため金利収入に頼る生活など望むべくもないのですが、金利がある程度あれば資産家はインカムゲインを大事にするのです。元本は減らなければいい。さらに言えば、元本は返ってこなくてもいいからインカムを永久に保証してくれる商品が欲しいという方がいます。それに応えるために、かつてイギリスでは永久債という債券がありました。政府が発行して、元本に償還期限がなく永久に金利が支払われます。富裕層は孫子の代が放蕩して資産を食いつぶさないよう、永久債を相続の一部に使うのです。また年金基金などが長期の年金支払いを確保するために永久債に投資を行っていました。現在でも時折信用度の高い発行体が50年~100年債券などを発行するケースがあります。

日本でも最近になって、やっと株式投資のみでなく株式以外の金融資産を対象とするようになってきています。それでも証券会社のお薦め商品のほとんどが海外を対象とする投資信託で、中身はREIT(不動産投信)やリスクの大きなハイイールド債券投信だったりして、値下がりリスクは株式と何ら変わりないほど大きなリスク商品です。ところが面白いことに日本の投資家がそうした商品を買う一番の目的は、実はインカムゲインです。高配当を出す投資信託が飛ぶように売れているのは何よりの証拠です。

しかし債券と投信ではインカムゲインの内容は決定的に異なります。投信は金利ではなく「配当」を配る、従って配当後に元本は同じ分減ってしまい、利益はゼロなのです。株式の配当落ちと同じです。もし元本が値上がりしていない時にそれを行えば、タコが自分の足を食べるタコ足配当になってしまいますので、高配当投信には十分ご注意を。

ここまでのお話をまとめますと、資産運用とは決してキャピタルゲインばかりでなく、本当の資産家はインカムゲインを大事にするのです。

ずいぶん資産運用に逸れてしまいました。次回は欧米の絵画投資についての話に戻します。

 

絵画販売 >>
絵画買取 >>

コラム一覧に戻る