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美術商が抱える贋作問題
~フェイク・アートは美術品か? その真の価値とは?

7月30日(火)に金沢工業大学大学院 虎ノ門キャンパスで、KITコンテンツ&テクノロジー総合研究所主催メディア・マネジメントセミナー【フェイク・アートは美術品か? その真の価値とは?】が開催されました。今回は、翠波画廊代表髙橋が、スピーカー/パネリストとして登壇した際の講演内容を、使用したスライドとともにご紹介いたします。 登壇されたスピーカーは、こちらです。(※画像は、K.I.T.虎ノ門大学院のHPに掲載されているスピーカー紹介より)

 

 

 

 

このうち、Juan M. Sevillano氏は海外よりライブ中継が予定されていましたが、都合がつかず急遽不参加に。代わりに、元ライブドア社長で、現小僧com株式会社代表取締役会長の平松庚三氏が登壇されました。 セミナーでは、オープニングレクチャーの後、各スピーカーが登壇。髙橋は後半の最初に登壇しました。

 


 

美術商が抱える贋作問題

会場には130人程が参加。熱心にメモを取る聴衆も。

美術商と言ってもそれぞれ専門とするジャンルがあり扱う美術品も絵画、彫刻、工芸品と多岐にわたります。 私の取り扱う専門分野は、19世紀の印象派から20世紀初頭の近・現代フランス絵画です。 ジャンルや取り扱う作品の時代が変われば真贋の見分け方や解釈が変わるかもしれませんので、今回は私の専門ジャンルに限っての話とさせていただきます。

 

美術商は日々贋作との闘い

当社は、自社の画廊、百貨店や同業者への卸をしていて、年間1400点程の絵画を販売しています。 その内の約30%は画家と直接取引をして画家から仕入れています。 残り70%の1000点弱の作品は二次市場(海外の画廊やオークション、個人のお客様)からの仕入れになります。 この二次市場からの仕入れに真贋の見極めが必要になります。

 

美術商に課せられた使命

使命などというと大げさですが、私たちは絵画を購入するお客様のお手伝いをするわけです。 画家本人の作品であれば高額で取引される絵も、贋作となれば市場価値が無くなってしまいます。お客様にお売りする作品の価値をしっかりお伝えし、真作をお求めいただくために私たちが間に入って真贋をしっかりと見極めなければいけないと考えています。

 

贋作の定義

画家の絵を画家以外の人間が模写、あるいは似せて描いたものに画家のサインを入れて画家の作品であると偽って世に出したものを贋作と認識しています。 ただし模写であることを明かした絵は贋作とは言えないのかもしれません。

 

贋作を作る目的

一番は金銭目的です。作品の値段が高い画家の場合は手間暇をかけて贋作を作っても十分割に合うわけです。 しかし、例外的に映画「美術館を手玉に取った男」に出てくるマーク・ランディスのように 金銭を要求せず美術館に自身の作った贋作を寄贈し美術館側が見破ることができないことを楽しむ愉快犯などもいます。 しかし、ほとんどの場合、金銭目的です。

 

世に出回る贋作の数

〇 ゴッホ美術館が1998年から鑑定を始めて年間200点の鑑定依頼が来るそうです。 20年ほど経ちますが、現在までに真作と認められた作品は14点だそうです。 〇 ユトリロ協会のユトリロ鑑定家セドリック・パイエによれば「例えば、10点の鑑定依頼がきたとします。内3,4点は無知な人が持ち込んだ複製画、3,4点は悪意のある贋作、残り2,3点が慎重に鑑定した結果真作として鑑定書を発行する」と言っていました。

 

ということは画家の描いた真作以上の贋作が流通しているわけです。

 

贋作の見極め方

視覚鑑定・・・専門家が全体的な印象と画家の絵具を塗るときの筆のタッチなど癖を見ます。 (この視覚鑑定は今後、AIに画家の作品を読み込ませればAIの方が精度の高い鑑定を行うことができるようになると言われています) 様式鑑定・・・画家の様式(スタイル)は時代とともに変わっているが作品の制作年と様式が合っているかを見て判断します。 また、風景画などの場合は当時の写真や絵ハガキなどと見比べて、当時の建物や塀などに違いがないかを見ていきます。 科学的鑑定・・・画家が当時使っていた絵具やキャンバスと同じかどうかを科学的に調べます。 このところよく聞く「放射性炭素年代測定」などによって描かれた絵の年代を特定するという方法もあります。

 

美術商の贋作に対する対応策

油彩、水彩などの1点ものの作品は、画家が亡くなると作品の売り買いには鑑定書を付けて取引をしなければならないということになっています。

 

ただし例外もあります。画家によっては生前、画家と販売契約していた画廊やその画家の研究者によって編纂されたカタログレゾネと呼ばれる作品目録が作られていることがあります。そこに掲載されている作品の場合は、鑑定書は必要ないことになっています。
現存の画家の場合は売り買いの際でも鑑定書は必要ないことになっています。理由としては、画家が生きているので画家に確認すれば解決するからということです。

 

しかし、これが曲者で鑑定書を付けなくても良いということが、贋作の多く出回る原因にもなっています。 現代のフランス人気画家カシニョールブラジリエなどは存命中のため、鑑定書を付ける必要がないということもあって割と贋作を目にします。 私の場合は、高額で取引される現存画家の作品を画家本人以外から仕入れる場合は作品の画像を画家本人に見てもらい真贋を確認しています。

 

鑑定書の発行は誰か

鑑定書の発行元は、画家の親族、画家と専属契約をしていた画廊、画家についての研究者、画家の周辺の人たちが集まって作った財団の場合もあります。

 

それらが発行する鑑定書が正規のものと認められるためには世界二大オークション会社のクリスティーズとサザビーズから承認されなければいけません。 この二大オークション会社では、その時点で正規とオークション会社が認める鑑定書が付かなければ売ろうとしても受け付けてくれませんので、オークションでは当然、一般市場でも売ることができません。

 

今、その時点と言ったのは鑑定家が亡くなったりして鑑定家が変わると、鑑定の基準が変わることがあるからです。

 

鑑定書があっても出る被害

〇 鑑定書ごと偽造して偽物を売る 〇 本物の絵画とその鑑定書を分けて、本物を模写した贋作に本物の鑑定書を付けて売り、本物の絵画を鑑定書を紛失したと言って再発行した鑑定書を付けて売る

 

画家から見た贋作問題

〇 稚拙な贋作が出回ることで自分が築き上げてきた芸術性や鑑賞者に与えるイメージが損なわれる 〇 贋作が出回りそれが安く取引されることで真作の市場価値も損なわれる 正規のルートで売りにくい贋作は、訳あり作品として価格を安くして取引されるので価格に下方圧力がかかってしまう。

 

画家にとって贋作が作られ始めると一流画家になったと誉め言葉のように言われることがありますが、画家本人にとって自身の贋作が作られるというのは問題の方が多いようです。

 

 

私が美術商として、日々向き合っている贋作問題をお話しさせていただきました。 ご清聴ありがとうございました。

 


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