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「20世紀最後の巨匠」とは誰か
~ヒント:ピカソではありません

平成が終わって、令和が始まり2カ月が経ちました。西暦では、1901年から2000年まで続いた20世紀が終わって、約20年になります。21世紀生まれの子供たちが社会人になる日も近づき、20世紀は遠くなりつつあります。翠波画廊が主に取り扱う近代絵画の画家たちは、19世紀末から20世紀にかけて生きたため、最近はすっかり評価の定まった歴史的な画家として美術史にその名前を残しています。ピカソやマティスをはじめとする「20世紀の巨匠」と称される画家のほとんどは、すでに鬼籍に入りました。
では、「20世紀最後の巨匠」と呼ばれる画家が誰になるか、ご存じでしょうか?

 

 

ピカソが名づけた「20世紀最後の巨匠」

ピカソ「扇子を持つ女」
ピカソ作品一覧 >>

もったいをつけてもしょうがないので、答を書きましょう。
「20世紀最後の巨匠」とはフランスの画家バルテュス(1918-2001)のことです。この呼称は、「20世紀最大の巨匠」ピカソが、37歳年下のバルテュスを賞賛してのものだと言われています。そしてピカソはバルテュスの絵画『ブランシャール家の子どもたち』を購入しています。 ピカソがいつどのような状況で口にしたのか、確かな出典を見つけることはできなかったのですが、おそらく少女に性的なイメージを重ねあわせることでタブーに挑戦したバルテュスに感心してのものだと思われます。
ピカソ自身、美術業界のさまざまなタブーに挑んできました。45歳の時に17歳の愛人マリー・テレーズを作るなど女性の若さへの執着もあったのですが、バルテュスのように、10代前半の少女を性的に描くことはしませんでした。ちなみに、バルテュスが二番目の妻である出田節子と出会ったのは54歳の時で、そのとき節子は20歳でした。ピカソが54歳の時に何をしていたかといえば、28歳の愛人ドラ・マールとの交際を始めています。いい勝負かもしれません。

 

 

この二人には他にも共通点があります。
ピカソの娘パロマ・ピカソはティファニーのジュエリー・デザイナーとして有名ですが、バルテュスの娘ハルミ(春美)・クロソフスカ・ド・ローラもジュエリー・デザイナーとして活躍中です。ちなみに、バルテュスの本名はバルタザール・ミシェル・クロソフスキー・ド・ローラといって、由緒正しい貴族の家系なのだそうです。さらに、バルテュスの家族は、父は美術史家、母は画家、兄は小説家という芸術一家で、幼い頃は家にボナールやマティスが訪ねてきていたそうです。やがて両親が離別してしまいますが、その後にバルテュス兄弟の父親代わりとなったのがドイツの詩人リルケです。リルケはバルテュスの画家への思いを後押ししてくれました。こうして、ピカソいわく「20世紀最後の巨匠」画家が誕生したのです。バルテュスが亡くなったのは21世紀最初の年、つまり2001年でした。ですからまだ死後20年も経っていないのですが、近年、その評価がどんどん上がってきました。
最近、2019年5月13日のクリスティーズ・オークションで、バルテュスの絵画『ベンチシートの上のテレーズ』が約21億円で落札されました。この価格は、たとえばシャガールの絵の最高落札価格をも超える記録的なものでした。

 

 

画家だけではない「20世紀最後の巨匠」たち

実は「20世紀最後の巨匠」と呼ばれるのはバルテュスばかりではありません。
グーグルで「20世紀最後の巨匠」を検索すると、さまざまな名前が出てきます。芸術の世界は幅が広くて、美術でいえばバルテュスが「20世紀最後の巨匠」ですが、音楽や映画にはまた別の「巨匠」がいるのです。 たとえば、建築では104歳まで生きたブラジルのオスカー・ニーマイヤー(1907-2012)が「20世紀最後の巨匠」と呼ばれています。ニーマイヤーはブラジル国民会議議事堂や国際連合本部ビルなどを手掛けたブラジルの英雄で、その名を冠した美術館があります。
映画の世界では、スウェーデンのイングマール・ベルイマン(1918-2007)が「20世紀最後の巨匠」です。その作品の多くがモノクロフィルムで撮られているため、現在ではテレビ放映されることもほとんどありませんが、黒澤明やフェデリコ・フェリーニと並び称される映画監督です。 音楽の世界はもっと細分化されています。
ピアニストではアメリカのルース・スレンチェスカ(1922-)、ヴァイオリニストではイスラエルのイヴリー・ギトリス(1925-)に、「20世紀最後の巨匠」の贈り名が与えられています。どちらも21世紀の現在も存命ですから、20世紀の芸術家扱いは失礼かもしれません。

 

 

「フランス画壇 最後の巨匠」とは誰か?

このように、各界にそれぞれ「20世紀最後の巨匠」が存在しているのは、何をもって「20世紀最後」とするのかも、誰がそれを決めているのかも不明だからでしょう。最初に言ったもの勝ちのような感じもあります。
「20世紀最後の巨匠」というのはキャッチーなパワーワードなので、広告宣伝目的で使われることも多いようです。たとえば、CDの商品名として「20世紀ロシア最後の巨匠ピアニスト」シリーズがあります。こちらでは「最後の一人」のニュアンスを醸しつつ、タチアナ・ニコラーエワ(1924-1993)、ラザール・ベルマン(1930-2005)、ミハイル・プレトニョフ(1957-)の3人が選ばれています。ロシアと地域を区切ることで「20世紀最後の巨匠」の概念を広げているのです。 美術の世界にも同じようなことがありました。 昨2018年は、フランスの画家フランソワ・ブレ(1918-2004)の生誕100年にあたり、これを記念して日本でも展覧会が開かれました。この際のキャッチコピーが「ピカソ、マティスに次ぐフランス画壇 最後の巨匠」でした。
ブレの作風はマティスにも似て、明るい色彩と暖かみのあるモチーフが特徴です。その意味では、タブーに挑戦する異端の画家バルテュスと正反対です。ブレがマティスなら、バルテュスはピカソに擬することができます。
王道のブレと異端のバルテュス、あなたならどちらを「最後の巨匠」に選びますか?

 


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