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村上隆のアート戦略
~攻殻機動隊からカニエ・ウェストへの変遷

週刊東洋経済2021年2月20日号「アートとお金」特集によれば、作品の値上がり幅が大きい日本人アーティストの筆頭は村上隆です。
村上隆の彫刻作品≪My Lonesome Cowboy≫は、1998年の発表時は約500万円でしたが、20年後のオークションでは約16億円で落札されました。価格の上昇は320倍です。
現在、六本木ヒルズの66プラザでは、高さ10メートルに及ぶ村上隆の新作彫刻≪お花の親子≫が披露されています。金色に輝くこの彫刻は村上隆の作品の中でも最大級で、非常に見応えのあるものです。
≪お花の親子≫を含む村上隆の「ROPPONGI HILLS TAKASHI MURAKAMI PROJECT」は2021年5月末まで続く予定です。
このようにアートシーンで常に注目を集める村上隆は、著書『創造力なき日本』の中で、アーティストの成功パターンは6つあると述べています。
その6つとは、ダ・ヴィンチのような「天才型」、山下清のような「天然型」、狩野永徳のような「努力型」、アンディ・ウォーホルのような「戦略型」、印象派のような「偶然型」、パウル・クレーのような「死後型」です。
そして村上隆は、自分は「努力型」であり「戦略型」であると述べています。
村上隆が日本のみならず世界のアートマーケットで注目されるのは、その「戦略」と「努力」の結果です。
いったい、どのような戦略があったのでしょうか。

 

アニメとゲームの村上隆

『Ghost In The Shell – Megatech Body CD.』
ソニー・ミュージック・レコーズ(1997)村上隆

アート業界で生き残るために村上隆が考えた戦略とは、民間企業のビジネスに通じるものがあります。
すなわち「営業」=「どれだけうまくご機嫌取りができるか」が問われるというのです。
その第一歩として村上隆が推奨するのが「ちゃんとした挨拶」であり、次に「時流や顧客に合わせた表現」です。
1996年に制作工房のヒロポンファクトリーを設立し、2001年には有限会社カイカイキキに発展させて経営者としての側面も持つ村上隆は、アートのビジネス的な側面に非常に自覚的です。
アーティストは「エリート」ではなく「最下層」との自覚を持たないとやっていけないと村上隆は従業員に諭しています。お客様を尊重する気持ちを持たせたいのでしょう。

『Ghost In The Shell – Megatech Body CD., LTD.』
(限定版2枚組)
ソニー・ミュージック・レコーズ(1997)村上隆

実際に、ヒロポンファクトリー時代の1997年に村上隆が手掛けたプレイステーションのゲーム『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』のサウンドトラックCDのジャケットデザインなどを見ると、表面に村上隆のカラーがまるで見えないことに驚きます。
アニメやゲームの『攻殻機動隊』のファンにとって、村上隆の作家性が何の意味も持たないことをよくわかっているのでしょう。
とはいえ、CDケースの裏面が表ジャケットであり、ケースの表面にクレジットとバーコードが印刷されている変則的なデザインや限定版における3Dデザインは、気鋭の現代アーティストによる制作を感じさせますし、『攻殻機動隊』の近未来SFらしさも出ています。
また、クレジットを見れば、アートディレクションとしてTAKASHI MURAKAMI(HIROPON)の名前があり、インナースリーブには村上隆の大和絵が挿入されていて、自己主張も忘れてはいません。

インナースリーブに印刷された村上隆の絵

 

爽やかなイメージの村上隆

竹村延和
『Finale : For Issey Miyake Men By Naoki Takizawa』
WEA JAPAN(1999)村上隆

その後のCDジャケットの商業デザインを見ても、村上隆の場を読む能力の卓越ぶりはよくわかります。
1999年の竹村延和による「イッセイ・ミヤケ2000年春夏ミラノ・コレクション」のサウンドトラックのCD『フィナーレ』では、自らの花のキャラクターを使いながらもファッション業界のおしゃれな雰囲気を醸し出しています。

2003年のジュン・スカイ・ウォーカーズのトリビュート盤とベスト盤では、同時発売の2枚で共通性を持たせて、村上隆の作風を押し出しながらも、すでに解散しているバンドのイメージを壊さないようにシンプルなデザインできれいにまとめました。

『WALK TOWARDS THE FUTURE~JUN SKY WALKER(S) TRIBUTE~』
トイズファクトリー(2003)村上隆

『WALK TOWARDS THE FUTURE〜JUN SKY WALKER(S) BEST〜』
トイズファクトリー(2003)村上隆

 

村上隆『VISION’D VOICE 006 TAKASHI MURAKAMI 2003』
D&DEPARTMENT PROJECT(2005)村上隆

さらに、インタビューアルバム『VISION’D VOICE 006 TAKASHI MURAKAMI 2003』で自らの考えを明確に語るなど、アーティスト像の確立も怠りませんでした。制作だけに専念していては名を売ることは難しいとわかっていたのでしょう。

 

カニエ・ウェストと村上隆

Kanye West『The College Dropout』
Roc-a-Fella(2004)

アメリカのヒップホップアーティスト、カニエ・ウェストのCDジャケットのデザインにおけるエピソードも非常に示唆的です。
著書『創造力なき日本』によれば、カニエは「一度、遊びに行きたい」と村上隆のスタジオを訪ねてきて「明日、また来る」と行って帰っていったそうです。
驚いた村上隆は、知人に連絡してカニエの好みを聞いて、翌日は彼の好きな食べ物や飲み物を用意して「おもてなし」をしたそうです。
それを受けたカニエは「この場所はクリエイティブだ」と気に入って、次の日もその次の日も来てスケッチをした末に、「一緒に仕事をしようぜ」と言い出したのだそうです。

Kanye West『Late Registration』
Roc-a-Fella(2005)

ビジネスマンとしてお客様をもてなす気持ちを持っていたことが、スーパースターのCDジャケットをデザインする幸運を運んできたのでしょう。
『Graduation』デザインの際も、前作、前々作のジャケットで使用されていた、カニエのお気に入りキャラクターのドロップアウト・ベア(落ちこぼれクマ)をきちんと取り入れて、カニエ・ウェストらしさを大切にしつつ、村上隆らしさも出しています。
カニエ・ウェストとのコラボレーションは、アルバム2枚、シングル5枚、ミュージックビデオ1本、アニメ作品1本と、10年以上に渡る長期的な関係になりました。
村上隆はゆずとのコラボレーションでも、アルバム6枚、シングル1枚、ミュージックビデオ1本、DVD2枚と、20年近い良好な取引を続けています。
これぞ、村上隆の「おもてなし」力のなせるわざでしょう。

Kanye West『Graduation』Roc-a-Fella(2007)村上隆

Kanye West – Good Morning

KIDS SEE GHOSTS ANIMATED SHOW PREVIEW (2020)

参考文献:村上隆『創造力なき日本――アートの現場で蘇る「覚悟」と「継続」』角川書店

 

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