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Vol.15 絵画と資産運用 その10 アメリカ人の資産運用3

前回は私の友人でアメリカ人Aさんの確定拠出年金401Kの運用状況を見てみました。
Aさんの場合、90年くらいに投資を開始し、ITバブルの崩壊やリーマンショックがありましたがそれらを乗り越え、毎年の平均リターンが約8%と順調に資産を増やしています。
それを実現できたのはアメリカ経済が順調に拡大したおかげで株価が上昇したことと、アドバイザーが的確な投資アドバイスを行った結果だと思います。

では例えば彼が今後65歳くらいでリタイアしたと想定すると、その後のリタイアライフはどのようになるか、見当をつけてみましょう。
彼のポートフォリオは以下のようでした。

ハイテク成長株投信・・・3分の1

優良大型株投信・・・・・3分の1

債券投信・・・・・・・・3分の1

リタイアに近付くと上記のうち3分の1を占めているリスクの高いハイテク成長株投信の構成比を落とし、その分超安全な債券投信の構成比を増加させるのが一般的な戦略です。
リタイア後は給与所得がなくなり年金に頼るわけですから、元本が目減りしにくい安全な投資に向けるのが王道です。
さらに安全を目指すなら優良株投信も含め株式投資信託はすべてやめ、債券だけにする手もあります。
一番極端な選択肢は債券投信すらやめて、全額を生の米国債に直接投資するという選択肢です。
安全度から言えばこれが最も安全です。
日本でもアメリカでも、米国債は個人が自由に売買できます。

アメリカを始め世界の投資の専門家は米国債のことを「リスクフリー資産」と呼びます。
世界で最も安全であるため、こうした呼び方をするのです。
そしてリスクフリー資産から得られる金利を「リスクフリー・レート」と呼び、それが投資のリターンの最低基準になります。
投資とはリスクを取ってリターンを得るということですが、リスクを取る以上米国債の金利による最低限のリターンを上回ることができなければリスクを取るに値しない、ということになります。

日本人は債券投資自体になじみがない上、ドル建ての米国債とはいったいなんぞや、ということになるかもしれません。
しかし世界の投資スタンダードは米国債を最も安全な資産であることを認めているため、リスクフリー資産イコール米国債なのです。

そこで最も安全なリタイア後の投資とは米国債だけに投資し、そこから受ける金利だけに頼り、株式などの投資リスクをなくすという選択です。
現在の米国債金利は10年物で2%台なかば、30年物で3%前後と低いですが、Aさんの場合これまで順調に蓄えた運用額はかなりの額になっていて持ち家もあるため、夫婦2人の生活費は金利だけで十分にまかなえます。
例えば旅行などでそれ以上の贅沢な支出が必要であれば、米国債を部分売却すればよいのです。米国債は定期預金と違い、償還(満期)を迎えるまで下ろせないということはありません。
少額であっても、いつでもペナルティーなしで売却することが可能です。

債券は売却により多少の売却損益が出る可能性があります。
そのリスクを最小限に留めるには、償還までの年限を変えて年限の階段を作るような分散投資をすればよいのです。
償還が間近に迫ると価格変動はほとんどなくなるからです。
例えばリタイア後30年間を10に区切り、3年ごとに償還が来る米国債に分散し、3年ごとに10分の1づつ元本も取り崩すのです。
もちろん元本が減れば金利収入も減るのですが、高齢になればレジャーなどに使う額も小さくなります。
そして日本人と違いアメリカ人は死を迎える時に大きな元本を残すようなことをしません。自分で稼いだオカネは自分で使ってこそ人生を楽しめるというのがアメリカ人の人生哲学です。
多くのアメリカ人は高齢になると大きな家を売却して小さな家に移り住みます。
それは大きな家の高額な維持費用を嫌うからで、引っ越し好きな彼らにとってとても合理的な判断です。
売却による収入まで考えれば、金融資産の元本を使い切ることに抵抗はありません。
こうした人生設計に従った投資を行えば、リタイア後はリスクをほとんどなくして投資によるストレスを感じることなくリタイアライフを心からエンジョイすることができます。

私の知り合いでサンタフェに暮す友人やそのまた友人達のほとんどは、リタイアライフの裏付けをこうした超安全な投資に頼っています。彼らが年金生活をしながらも絵画投資をエンジョイできる秘密はこのあたりにあるのです。

私のアートエッセイも終わりが近づきました。次回を最終回とさせていただきます。

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