資産運用コンサルタント
林敬一氏のコラム

Vol.11 絵画と資産運用 その7

2014/09/20

前回は欧米での最近の傾向として中間的富裕層、もしくは高収入を得ている人達が資産運用という観点からではなく、オカネを「使って楽しむ」一環としてアートを買い求めているということを申し上げました。対象となるアートがたまたま後で価格を上げればそれにこしたことはない。しかし初めから値上がり目的で購入をするのではなく、あくまで好きな絵を家に飾って楽しむために購入するケースが多いのです。

そうした方々の楽しみ方は、超富裕層がコレクターやパトロンとしてアートを買い求めるのとは違い、まずは純粋に自分の気に入った作品を見つけるところから出発することが多いようです。そして対象となるアートはご自分で購入可能なお手頃値段であることが重要です。超富裕層の購入対象とは全く異なります。購入したアートは飾るためであって、お蔵入りはさせません。そうした欧米の中間的富裕層の例をお話します。

アメリカのニューメキシコ州にあるサンタフェという街をご存じでしょうか。アメリカ南西部にあるのですが、日本人にはなじみの薄い場所かもしれません。「篠山紀信が宮沢理恵の写真集を撮影した場所」と言ったほうが通りやすいかもしれません。砂漠の高原地帯にありますが比較的温暖なため、アメリカ人のリタイアメント・コミュニティがあります。街にはそうした人たちを相手にするアート・ギャラリーが多く、またアーティストがたくさん住んでいる街でもあります。かつてここに住んでいた著名なアーティストの例では、今は亡きジョージア・オキーフという女流アーティストがいます。長くここに住んで制作活動をして、人々の尊敬を受けていましたので、街には彼女のミュージアムもあります。

私は数年前にここに住むアメリカの友人一家を訪ねて1週間ほど街に滞在しました。住人の懐具合がどの程度かといいますと、私の滞在した家は両親・子供4人の6人家族ですが、広い敷地に母屋と客間の2棟が建ち、ベッドルームは8つもある平屋の家でした。リビング・キッチン・ダイニングにはそれぞれモダンアートの原画が飾られていて、ベッド・ルームにもそれぞれ異なる雰囲気の絵画が飾られていました。

その友人の誘いで訪問した別の家は、もともと小ぶりの教会だったそうで、リビングは天井の高いホールとなっていて数十人のパーティーは楽にできそうな大きさでした。教会を家にしてしまうとは、大胆な発想ですね。室内の壁面も高く大きいため、そこに似合う大きな絵画がたくさん飾られていて、まるで美術館の一部屋のようでした。

サンタフェはアートの街ですが、幅広いアートを扱うカーメルのギャラリーと違い、扱っている絵画のほとんどはモダンアートで、価格帯は安いもので数千ドルから高いものでは10万ドル単位くらいです。そうした絵画の買い手はリタイアした住人なのですが、彼らはあくまでも自宅に飾って楽しんでいます。若手アーティストのパトロンになるとか、投資目的で特定作家のコレクターになるというような意味での購入はしていません。

ところが、友人達の間で絵画に話が及ぶと、以外にも絵画の取引価格には関心が強かったのです。一般的にアメリカ人はモノの値段には敏感です。お金持ちでも、あのスーパーであの商品がいくらだとか、引っ越しを頻繁に行うため不動産価格や賃貸料が上がった下がったということを日常的に話題にします。その延長線上で「2年前に買った絵の作家の同じくらいの大きさの作品が値上がりしていた」といったことを盛んに話題にしていました。やはり日常の買い物ではなく、ある程度高額の買い物ですから、価格には関心があるのでしょう。

日本では人の家に掛っている絵がいくらだというようなことを話題にすること自体がはばかられるのですが、アメリカ人はむしろ積極的に価格を話題にして会話を楽しんでいます。

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