アートコラム

なぜ名画の価格はこんなに高いのか?

2017/11/28

 

2017年11月15日、ニューヨークのクリスティーズ・オークションで、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画「サルバトール・ムンディ」が美術品史上最高額で落札されました。
その価格は手数料込みで4億5030万ドル(約508億円)です。
これまでの落札最高金額は、2015年に同じくクリスティーズNYで落札されたピカソの「アルジェの女たち(バージョンO)」で手数料込み1億7900万ドル(約215億円)でした。一気に2倍以上の価格更新になったので、市場は大きな興奮に包まれました。
なぜ、絵画の価格はこんなに高くなったのでしょうか?

 

レオナルド・ダ・ヴィンチ「サルバトール・ムンディ」

 

ダ・ヴィンチの「サルバトール・ムンディ」の価格500億円とはどれくらいの金額でしょうか。わかりやすいのは、プロ野球オリックス・バファローズの本拠地、大阪ドーム(京セラドーム大阪)の建設費が約498億円です。スポーツスタジアムが一つ建てられるくらいの金額ですね。
ピカソの「アルジェの女たち」の200億円でも、千葉ロッテマリーンズの本拠地、千葉マリンスタジアム(ZOZOマリンスタジアム)の建設費はまかなえます。それほどの巨額が、一枚の絵画を入手するために投じられているのです。

ちなみにデ・クーニングの「インターチェンジ」は3億ドル(約360億円)と報道されていますが、これらはオークションではなく個人売買なので、落札価格の記録とは無関係です。

ダ・ヴィンチの絵画の価格が高騰した理由の一つは、その稀少性にあります。レオナルド・ダ・ヴィンチは15世紀のイタリア・ルネサンス期の巨匠ですが、建築や工学などの分野でも腕をふるったために、絵画作品は意外と多く残っていません。現存するダ・ヴィンチの絵画は15枚、多くても20枚に満たないとされています。当然、その作品が市場に売りに出されることは滅多になく、オークション前から話題を集めていました。

 

もう一つの理由は、その名声にあります。美術史上で最も有名な絵画を挙げろと言われれば、候補はいくつかありますが、ダ・ヴィンチの「モナリザ」が最右翼になるのではないでしょうか。落札された「サルバトール・ムンディ」は「モナリザ」の男性版と言われることもあり、誰もが入手したいと思うような絵画でした。ありえない話ですが、もし「モナリザ」そのものがオークションに出たら、その価格は今回の何倍、何十倍になるかもしれません。

 

「モナリザ」

 

三番目の理由は、時の運です。絵画にはもちろん相場があります。ダ・ヴィンチの「モナリザ」といっても、日本やアメリカの国家予算規模の価格がつくことはありません。それだけの金額を支払える買い手はいませんし、いたとしても1枚の絵画に使えるとは限りません。オークションの場合、買い手はだいたいこれくらいの価格で落札したいとの予算をあらかじめ持っています。そして、予算以上に価格が高騰すれば、あきらめるのが通例です。しかし、二人以上の買い手が落札を競った場合、競争意識から、しばしば相場や予算を超えて金額がヒートアップすることがあります。今回もオークション会社の見積価格を大幅に超えたのは、競りの魔力が働いたと言えるでしょう。

 

四番目の理由は、資産価値です。ダ・ヴィンチの絵画のように有名で稀少性の高い作品の場合、その価値が減じることはほとんどありません。オークションの史上最高価格が年々更新されているように、世界経済の拡大とインフレに伴って、絵画の価格も上昇することが見込まれています。もちろん、世界恐慌が起きて大幅なデフレになれば、絵画を含めてすべての資産価値は下落するでしょうが、それでも、欲しかった作品を所有して眺める喜びは残ります。

最後の理由は、歴史の持つ力です。世界遺産とも呼べるような芸術作品は、年を経るにつれてその価値を漸増させていきます。なぜならば、1000年前の建築、500年前の絵画は、二度と同じものが作られないからです。レオナルド・ダ・ヴィンチと並び称されるくらいの天才はこの先も現れるかもしれませんが、レオナルド・ダ・ヴィンチ本人は二度と出てきません。歴史的な文化遺産であることは、その絵画の価値をこの先もずっと保証してくれるでしょう。

とはいえ、絵画購入にはいくばくかのリスクもあります。それは、盗難や災害による消失のリスクと、後に贋作であることが判明するリスクです。

実際、ダ・ヴィンチの「モナリザ」は1911年にルーブル美術館から盗まれたことがあります(後に発見されて戻りました)。戦前に日本にあったゴッホの「ひまわり」は、空襲で焼失したと言われています。また、2008年には、ドイツのケルンで最も長い歴史を持つヴァルラフ・リヒャルツ美術館が、所蔵しているモネの絵画を修復作業中に贋作であることが判明したと発表しました。通常、所有者は作品が贋作であることを認めたがらないものですが、さすがにアカデミックな美術館は違いますね。

今回のダ・ヴィンチ作品の高額落札は、そのようなリスクを冒してでも所有したい魅力が芸術作品にあることを証明しているのかもしれません。

 

高額で取引された絵画ベスト10(2017年11月現在)
1. ダ・ヴィンチ「サルバトール・ムンディ」2017年、約4億5000万ドル
2. デ・クーニング「インターチェンジ」2015年、約3億ドル
3. セザンヌ「カード遊びをする人々」2011年、約2億5000万ドル
4. ゴーギャン「いつ結婚するの?」2014年、約2億1000万ドル(かつては3億ドルと報じられていましたが、最近2.1億ドルであると判明しました)
5. ポロック「Number 17A」2015年、約2億ドル
6. ロスコ「No.6」2014年、約1億8600万ドル
7. レンブラント「マールテン・ソールマンスとオーペン・コーピットの肖像」2015年、約1億8000万ドル(2枚1組)
8. ピカソ「アルジェの女たち(バージョンO)」2015年、約1億7900万ドル
9. モディリアーニ「横たわる裸婦」2015年、約1億7000万ドル
10. リキテンスタイン「マスターピース」2017年、約1億6500万ドル

 

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