オリジナル版画と復刻版画

画家が手掛けたオリジナル版画と復刻版画

版画は出来上がるまでに絵を描く、製版、刷りといくつかの工程を経て完成します。 そのため版画が画家の表現手段の一つとなるまではそれぞれの工程を専門の職人が分業して作っていました。 日本の浮世絵の場合、絵師が描いた下絵を基に彫り師が版木を彫り、刷り師が刷るというように役割が明確に分かれていました。このような分業は西欧でも同じで浮世絵の場合は版木に作家名や版元名が刻み込まれ絵と一緒に刷り出されていますが、西欧の場合も作家と共に彫り師や刷り師の名前まで画面下に刷り込まれることが多かったようです。 版画を制作する過程で、それぞれの職人の熟練した技が必要とされ、また職人も自身の手仕事にプライドを持っていたということです。

オリジナル版画

▲ユトリロの1924年作の直筆サイン入り・
オリジナル版画「オルシャン通り」(リトグラフ)
それが19世紀の終わり頃から版画が美術の表現手段として広まり始めると、画家が版画の制作過程を楽しみ、その全行程を自分で行うようになっていきます。 そのように版画のために下絵を描き製版・刷りなどの版画制作の全行程を画家が関与し制作された版画をオリジナル版画と言います。 20世紀に入ってからは多 くの画家達が積極的に版画を制作しました。シャガール、ピカソ、マティスなどのオリジナル版画は生前から人気が高く数多く制作されました。 そのため没後も美術品としてオークションなどで活発に取引され、ピカソに至っては版画といえども1億円を超える価格で取引される版画もあります。

エスタンプ(復刻版画)

▲ユトリロの著作権継承者 故 ジャン・
ファブリス氏の監修のもとに、
2007年に制作されたユトリロのエスタンプ
「ノルヴァン通り」(リトグラフ)
また、画家が描いた原画を基に画家や遺族の承諾を得て版画が作られた場合は、オリジナル版画とは見なさずエスタンプ(復刻版画)という呼び方で一般的に分類されます。 この復刻版画を指すエスタンプという呼び方は日本独自のもので本来エスタンプという言葉は版画そのものを意味するフランス語です。では海外では復刻版画を何と呼ぶかといいますと、リプロダクションと呼びます。ただリプロダクションといっても版画制作の過程で作家のかかわり方によって美術品としての価値が変わってきます。
▲故 ジャン・ファブリス氏のサイン
作家が許可した版画工房や版画職人が制作した版画に、画家本人が目を通して一枚一枚に署名をしたものは、原画があってその絵を版画化したということから作家名の前にアフターを付けます。例えばシャガールですとアフター・シャガールと呼び、オリジナル版画とは区別して準オリジナルとして同程度のオリジナル版画の半分位の価格で取引されます。 また画家の死後、その画家の著作権を継承する人の許可を得て版画を制作し、余白に著作権継承者の署名を入れて作られる版画もありますが、その画家が生前あまり版画を作っていなかった作家の場合などは時間の経過とともに価値が出る場合もあります。

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