後期印象派とは?

後期印象派(ポスト印象派)とは?
特徴と代表画家をわかりやすく解説

光を追った印象派から、形・色・心を描く絵画へ

フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》 油彩 1888年 <br><noscript><img decoding=フィンセント・ファン・ゴッホ
《ひまわり》 油彩 1888年
出典:Wikipedia

後期印象派とは、19世紀末、印象派の表現を受け継ぎながら、そこからさらに新しい絵画を生み出そうとした画家たちの総称です。「ポスト印象派」「ポスト・インプレッショニズム」とも呼ばれます。
代表的な画家には、ポール・セザンヌ、フィンセント・ファン・ゴッホ、ポール・ゴーギャンなどが挙げられます。ただし、彼らが同じ理念のもとに集まって結成した画派ではありません。それぞれが異なる方法で、印象派の先にある絵画を追求しました。

後期印象派を一言で表すなら、次のようになります。
印象派が目の前の光や色を描いたのに対し、後期印象派は画家自身の感情、思想、構成、色彩を重視した。

後期印象派とは

ポール・セザンヌ《リンゴの籠のある静物》<br><noscript><img decoding=ポール・セザンヌ《リンゴの籠のある静物》
油彩 1890-94年
出典:Wikipedia

後期印象派の英語名は「Post-Impressionism」です。「post」には「後の」「次に来る」という意味があるため、日本語では「後期印象派」または「ポスト印象派」と訳されています。
活動時期は、最後の印象派展が開催された1886年頃から20世紀初頭までと考えるのが一般的です。しかし、始まりや終わりが明確に定められた運動ではなく、印象派以後に現れた多様な表現をまとめるための美術史上の呼び名です。

「ポスト印象派」という名称を広めたのは、イギリスの画家・美術批評家ロジャー・フライです。フライは1910年にロンドンで開催した展覧会において、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンらを「ポスト印象派」として紹介しました。

つまり、画家たち自身が「私たちはポスト印象派である」と名乗っていたわけではありません。後世の批評家が、印象派の次に登場した新しい絵画表現を整理するために付けた名称なのです。

後期印象派が生まれた背景

ポール・ゴーギャン《タヒチの女(浜辺にて)》<br><noscript><img decoding=ポール・ゴーギャン《タヒチの女(浜辺にて)》
油彩 1891年 出典:Wikipedia

モネやルノワールをはじめとする印象派の画家たちは、屋外の光や空気、時間とともに移り変わる色彩を描こうとしました。輪郭を細かく描き込むのではなく、短い筆触や明るい色彩を使い、その瞬間に目に映った印象を画面に表現したのです。
この革新的な表現は、若い画家たちに大きな影響を与えました。一方で、次の世代の画家たちは、目に映る一瞬の印象だけではなく、物の形や画面の構造、人間の感情、宗教的・象徴的な意味まで絵画に表そうと考えるようになります。
印象派を否定したというよりも、印象派が切り開いた色彩表現を出発点に、それぞれが別の方向へ発展させたと考えると分かりやすいでしょう。

後期印象派の4つの特徴

フィンセント・ファン・ゴッホ《星月夜》油彩 1889年<br><noscript><img decoding=フィンセント・ファン・ゴッホ《星月夜》油彩 1889年
出典:Wikipedia

後期印象派の画家たちは、それぞれまったく異なる作品を制作しました。そのため、後期印象派全体に共通する一つの画風があるわけではありません。
それでも、作品にはいくつかの共通した傾向が見られます。


1 画家の感情を表す色彩

後期印象派では、現実に見える色をそのまま再現することよりも、画家が感じたことを表すために色が使われました。ゴッホの黄色い空や青い夜空のように、色そのものが喜び、不安、孤独、生命力などを伝える役割を果たしています。


2 形と構成の重視

印象派では光によって物の輪郭が溶けるように描かれることがあります。それに対してセザンヌは、リンゴ、人物、山などを、重さや量感を持つ形として画面に組み立てました。目の前の景色をそのまま写すのではなく、絵画としてどのように構成するかが重視されています。


3 個性的な筆遣い

ゴッホのうねるような線、セザンヌの色面を積み重ねる筆触、ゴーギャンの平坦で大きな色の面など、筆遣いそのものに画家の個性が表れています。誰が描いた作品なのかを一目で感じられるほど、作家ごとの画風が明確になったことも、後期印象派の特徴です。


4 象徴性や精神性

ゴーギャンをはじめとする画家たちは、目の前にある現実だけでなく、神話、宗教、記憶、夢、人生への問いなどを作品に取り入れました。
絵画は見えるものを記録するだけでなく、画家の思想や内面を表すものへと変化していきます。

印象派・後期印象派・新印象派の違い

ジョルジュ・スーラ《グランド・ジャット島の日曜日の午後》油彩 1884-86年 出典:Wikipedia

ジョルジュ・スーラ《グランド・ジャット島の日曜日の午後》
油彩 1884‐86年 出典:Wikipedia

印象派は1870~1880年代を中心に、光や空気、時間の移ろいなど、目に映る一瞬の印象を重視した芸術運動です。代表的な画家にはモネやルノワールがいます。
後期印象派は1886年頃から広がった総称で、形や構成、感情などを重視し、画家それぞれが独自の表現を追求しました。セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンなどが代表的です。
一方、新印象派はスーラやシニャックを中心とする運動で、色彩理論に基づき、色を分割して描く技法を用いました。そのため、後期印象派が広い総称であるのに対し、新印象派はより限定された芸術運動といえます。

 

後期印象派の代表的な画家

ポール・ゴーギャン<br><noscript><img decoding=ポール・ゴーギャン
《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》
油彩 1897‐98年 出典:Wikipedia

ポール・セザンヌ

自然や物を色彩と形の組み合わせとして捉え、独自の構成を追求した画家です。静物画では複数の視点を組み合わせるなど、後のキュビスムに大きな影響を与えました。《サント=ヴィクトワール山》《カード遊びをする人々》などが代表作です。


フィンセント・ファン・ゴッホ

鮮やかな色彩と力強い筆触によって、自然や自身の感情を表現しました。厚い絵具とうねるような線が特徴です。《ひまわり》《星月夜》《夜のカフェテラス》などが代表作です。


ポール・ゴーギャン

現実の再現よりも感情や象徴性を重視し、大きな色面と明確な輪郭線を用いて作品を描きました。《黄色いキリスト》《我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか》などが代表作です。


ジョルジュ・スーラ

新印象派を代表する画家です。色を細かな点に分けて配置する「点描」を用い、光学や色彩理論を取り入れて計画的に画面を構成しました。《グランド・ジャット島の日曜日の午後》が代表作です。


このほか、アンリ・マンギャン、シャルル・カモワン、オトン・フリエス、ジャン・ピュイらもフォーヴィスムに参加しました。ジョルジュ・ルオーも関連づけられますが、太い黒線と宗教的・社会的な主題による独自の表現を発展させたため、フォーヴィスムとは別に扱われることもあります。

後期印象派が近代美術に与えた影響

フアン・グリス《ピカソの肖像》<br><noscript><img decoding=フアン・グリス《ピカソの肖像》
油彩 1912年 出典:Wikipedia

後期印象派の画家たちが重要なのは、一つの新しい画風を確立したからではありません。むしろ、画家が自分独自の方法で世界を表現してよいことを示した点に大きな意味があります。
セザンヌの造形的な研究はキュビスムへ、ゴッホの感情的な色彩と筆触はフォーヴィスムや表現主義へ、ゴーギャンの平面的で象徴的な画面はナビ派や象徴主義へとつながりました。
さらに、物を正確に再現することから絵画を解放したことで、20世紀の抽象絵画やモダンアートが生まれる土台もつくられました。

後期印象派作品の見方

ポール・セザンヌ《サント・ヴィクトワール山》<br><noscript><img decoding=ポール・セザンヌ《サント・ヴィクトワール山》
油彩 1887年頃 出典:Wikipedia

後期印象派の絵を見るときは、「何が描かれているか」だけでなく、「画家がどのように変えて描いたか」に注目してみましょう。


現実とは異なる色を探す
空、人物、木、地面などに、実際には存在しないような色が使われていないかを見てみます。その色には、画家の感情や作品の主題が反映されていることがあります。


筆の動きを見る
絵具の厚さ、線の方向、筆触のリズムを観察します。特にゴッホの作品では、筆の動きが風景の動きや画家の感情を伝えています。


画面の形とバランスを見る
セザンヌの作品では、物の形や配置、色面の重なりが重要です。少し不自然に見える遠近感も、画面全体を成立させるために意図的につくられた可能性があります。


画家ごとの違いを比べる
後期印象派には統一された様式がありません。セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンの作品を並べて見ると、それぞれが印象派から何を受け継ぎ、何を変えたのかがよく分かります。

よくある疑問

フィンセント・ファン・ゴッホ《夜のカフェテラス》<br><noscript><img decoding=フィンセント・ファン・ゴッホ《夜のカフェテラス》
油彩 1888年
出典:Wikipedia

Q.後期印象派とポスト印象派は同じですか?

一般的には同じ意味で使われています。「後期印象派」はPost-Impressionismの日本語訳で、「ポスト印象派」は英語の発音に近い表記です。ただし、印象派の後半期を指す言葉ではなく、印象派以後に独自の表現を追求した画家たちを指す総称です。


Q.ゴッホは印象派の画家ですか?

ゴッホは一般的に後期印象派、またはポスト印象派に分類されます。印象派や新印象派から影響を受けましたが、その後、厚い絵具や強い色彩、うねるような線を用いた独自の画風を発展させました。


Q.後期印象派はいつ頃の美術ですか?

おおよそ1886年頃から20世紀初頭までを指します。ただし、後期印象派は後から付けられた広い分類のため、活動期間に厳密な境界があるわけではありません。


Q.新印象派も後期印象派に含まれますか?

広い意味では一緒に扱われることがありますが、新印象派はスーラやシニャックを中心とする、比較的明確な芸術運動です。色彩分割など独自の技法を追求したため、後期印象派とは分けて説明すると理解しやすいでしょう。

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