アートコレクションはどう始めればよいか|初めての作品選びと集め方
「アートコレクションを始めてみたいけれど、何から買えばよいのか分からない」
これは、初めて画廊を訪れるお客様からよくいただくご相談の一つです。
アートの世界には、有名作家の油彩画から現代アート、版画、水彩、写真、立体作品まで、実にさまざまな作品があります。
価格も数万円から数千万円、場合によってはそれ以上まであります。
そのため、最初から「正しい作品を選ばなければ」と考えると、なかなか一歩を踏み出せなくなってしまいます。
しかし、アートコレクションの始まりは、本来もっとシンプルです。
まず大切なのは、「自分が本当に好きだと思える作品を一つ持つこと」です。
そこからコレクションは始まります。
1.最初は「好き」から選ぶ

色彩豊かなセネガルの画家・ドウツの作品
アートコレクションの出発点は、自分が好きだと思える作品です。
「何度見ても飽きない」「なぜか心に残る」「この作家の世界観に惹かれる」。そうした感覚を大切に、一枚を選んでみましょう。
最初に出合った作品が、やがて特定の作家やジャンルへの関心につながることもあります。自分の好みを知ることが、コレクションを育てる第一歩になります。
2.最初に予算を決める
大田和亜咲宜「冬の裏通り」油彩10号
コレクションを長く続けていくためには、無理のない予算を決めることも大切です。
最初から高額な作品を購入する必要はありません。
有名作家であっても、油彩画だけでなく版画やドローイングなど、比較的購入しやすい作品がある場合があります。
一方で、これから評価されていく若手作家の原画を選ぶという楽しみ方もあります。
一度の購入で理想のコレクションを完成させようとせず、長い目で楽しむことも大切です。
3.できるだけ多くの作品を見る
多様な作品に触れることで自分の好みが見えてくる
よいコレクションをつくるためには、まず作品を見ることです。
画廊、美術館、アートフェア、百貨店の展覧会などへ足を運び、さまざまな作品を見てください。
最初は、「自分が何を好きなのか分からない」という方も少なくありません。
しかし、たくさんの作品を見ていると、「人物画が好きだ」「鮮やかな色彩に惹かれる」「抽象画より具象画が好きだ」「現代アートが面白い」といった自分自身の好みが少しずつ見えてきます。
アートを見る経験そのものが、作品を選ぶ目を育てていきます。
4.作家について少し調べる
藤田嗣治の鑑定家・シルヴィ・ビュイッソン氏と
気になる作品を見つけたら、その作家がどのようなテーマを追求し、どのような作品を生み出してきたのかを調べてみましょう。
作家の歩みや制作の背景を知ると、一枚の作品から感じ取れるものも変わってきます。最初は何となく惹かれた作品でも、背景を知ることで、より深い愛着が生まれることがあります。
作品を通じて作家への理解を深めていくことも、コレクションならではの楽しみです。
5.作品の「位置づけ」を確認する
ユトリロ 油彩作品
同じ作家の作品であっても、描かれた時代やテーマ、表現方法によって、それぞれ異なる魅力があります。
作品を一枚ずつ見るだけでなく、作家の歩みの中でどのような意味を持つのかに目を向けると、コレクションの楽しみはさらに広がります。
具体的な価格の違いや真贋・来歴の確認については、作品を購入する際にあらためて確認しておきましょう。
6.最初から統一したテーマを決めなくてもよい
作品との出合いを重ねながら見えてくるテーマ
コレクションというと、「テーマを決めて集めなければならない」と思う方もいます。
しかし、最初から厳密なテーマを設定する必要はありません。
最初は、自分が好きだと思った作品を集めてみる。
数点、十数点と増えていくうちに、
「自分は風景画が好きだった」
「フランスの作家が多い」
「人物を描いた作品ばかり集めている」
など、自分自身のコレクションの方向性が見えてくることがあります。
コレクションとは、最初に完成図を決めてつくるものではなく、作品との出合いを重ねながら、少しずつ形になっていくものでもあります。
7.一人の作家を深く集める方法もある
アンドレ・ブラジリエ 油彩作品
いろいろな作家を集める方法もあれば、一人の作家を深く集める方法もあります。
例えば、最初に購入した作家を気に入り、版画、ドローイング、小品、代表的なモチーフへと少しずつ広げていく。
そうすると、その作家の制作の変化や世界観を、作品を通して理解できるようになります。
これは、美術館とはまた違った楽しみ方です。
自分自身の手元に作品を置きながら、作家を知っていくことができるからです。
8.「有名作家」と「これからの作家」を組み合わせる
パリ発 期待のアーティスト・トクトク
コレクションにはさまざまな考え方があります。
例えば、すでに美術史的な評価が確立している作家の作品を持つ一方で、これから成長していく若手作家の作品も集めるという方法があります。
評価が確立した作家には安心感があります。
一方、若い作家の作品には、その作家が成長していく過程を一緒に見ていく楽しみがあります。
こうした異なる作品を組み合わせることで、コレクションにも幅が生まれます。
9.購入前には真贋・状態を確認する

画廊スタッフが丁寧にご説明します
コレクションを長く大切にしていくためには、作品の真贋や保存状態、来歴などを確認したうえで購入することが重要です。
特に、将来作品を手放したり、次の世代へ受け継いだりすることも考えるなら、購入時の資料や作品の情報を保管しておくとよいでしょう。
具体的な確認項目については、「初めて絵画を購入するときに確認する10項目」でも詳しくご紹介しています。
10.作品を買った後のことも考える
アートコレクションは、購入して終わりではありません。
自分の趣味や知識が変化するにつれて、コレクションも変わっていきます。
新たな作家に関心が広がったり、以前は気づかなかった作品の魅力を発見したりすることもあるでしょう。
作品の保存や将来の買い替えなどについても必要に応じて考えながら、自分のペースでコレクションを育てていくことが大切です。
アートコレクションに正解はない

ピカソ「黒い顔 No.40」セラミック
アートコレクションに正解はない
コレクターには、それぞれ違った考え方があります。
有名作家だけを集める方。
若手作家を応援する方。
版画だけを集める方。
人物画ばかりを集める方。
一つの作家を数十年にわたり集め続ける方。
どれが正しいということではありません。
むしろ、その人の価値観や人生が見えるところに、コレクションの面白さがあります。
最初の一枚でおすすめしたい考え方

ベルナール・ビュッフェ作品をお部屋に
初めて作品を購入する方には、私は、「少し背伸びをしてでも、本当に好きな作品を選んでください」とお話しすることがあります。
安いからという理由だけで選んだ作品よりも、「どうしてもこれを自分の家に飾りたい」と思った作品の方が、長く大切にされることが多いからです。
毎日その作品を眺める。
友人が来たときに作品について話す。
年月が経つと、その作品を買った時の記憶まで含めて、自分自身の人生の一部になっていきます。
そこに、アートを所有する大きな魅力があります。

翠波画廊代表 髙橋芳郎
株式会社ブリュッケ(翠波画廊)代表取締役。
美術大学卒業後、都内の画廊での修行を経て、1990年に独立。 1993年、故郷の秀峰の名を冠した「翠波画廊」をオープンさせる。
以降長きにわたり、ピカソ、マティス、藤田嗣治、ユトリロ、ローランサン等フランスの近代巨匠から、
ウォーホル、キース・へリング等現代アートまで幅広く扱う。
絵画購入をご検討でしたら、
翠波画廊にご相談ください。
TEL : 03-3561-1152
平日・土 10:00~18:00(日祝休)