富裕層がアートを購入する理由
このところ富裕層の方でアートを購入する方が増えています。
そこで今回は、富裕層がアートを購入する理由を画商の視点からまとめてみました。
1番目の理由は、アートの持つ本質的価値、高尚さや美的なものに対する憧れです。
大前提として、優れたアート作品はそれ自体が魅力を持っていて感性に訴えかけてくるものです。
美術史に名を残す有名アーティストの作品には文化的な重要性や歴史的価値もあります。
富裕層の購入者の方々と話していると、アート作品に秘められた逸話や物語にロマンを感じて購入するのだと感じます。
それは高尚な文化としての芸術に対する憧れであり、また芸術家に対する共感や敬意であり、
そのようなアート作品を所有することで精神的な満足感を得られるのです。
2番目の理由は、アート作品は威信財、権威財とも呼ばれています。
つまり、高額なアート作品を所有することは社会的地位や富と成功を示すことができ、優越感を感じさせてくれるものです。
また、社会的評価の定まった有名アーティストの作品は価格が高いだけではなく入手が難しい場合が多く、
そのような入手の難しいアート作品を所有することで得られる優越感に浸ることは、誰でもできるものではないのです。
そのような意味で高額作品をお求めになられるお客様の中には、
かねてから欲しいと思っていた画家の作品に巡り合って購入できたことを非常に喜んでくださったり、良い買い物ができたと逆に感謝してくださる方もいらっしゃいます。
3番目の理由ですが、アート作品は値上がりによって高いリターンをもたらすことがあります。
もちろん、短期的には値が下がることがないとは言えませんが、世界のマーケットで取引される有名アーティストの作品は、
長期的なデータで見るとインフレ率を上回る価格の上昇を示しています。
短期投資としてはお勧めできませんが、美術館に収蔵され世界的に価値の定まった20世紀巨匠の作品などは希少性が高く、
時間とともに価値が上昇する傾向にあります。
それとは別に、有名アーティストのアート作品は一般的な株式や不動産市場の変動とは異なる動きをすることがあります。
景気だけでなく、美術史的な評価や人気によって値が動くからです。
そのため、アート作品は時として想定外の高額になることがあるのです。
そのため海外の富裕層は、多様な投資ポートフォリオの一環として、資産価値の保全を目的にアート作品を購入し保有しています。
歴史に名を残す有名アーティストの絵画、アート作品は、実体経済の成長に伴って長期的に値上がりが期待できるため、
現金や預金で保有しているよりもインフレヘッジとして機能すると世界的に認識されています。
また資産価値だけでなく、そこに思いを込められるのがアート作品の特徴です。
以前、ご年配の女性が、生まれたばかりの女の子のお孫様のためにローランサンの作品を購入してくださいました。
お客様がおっしゃるには「この子に自分の好きなローランサンの作品を持たせてやれば
自分があの世に行ってもこの子がローランサンの絵を見るたびに私のことを思い出してくれるでしょう。
それと何といってもこの子が絵の好きな優しい子に育ってほしいから」
日本でも資産価値のある芸術作品を、このようなかたちで次の世代へと繋いでいかれるお客様もこのところ増えています。
4番目は、駆け出しのアーティストを支援する目的で作品を購入される方もいます。
アート作品を購入し、美術館などに寄贈することで社会に貢献するとともに、文化的な遺産としてのアートを後世に残していきたいと考える富裕層もいます。
そのように、文化教養に関心の高い富裕層は、芸術に対する情熱を持っていて、文化の維持や発展に貢献したいと考えていたりします。
富裕層は単にお金があるからという理由だけでなく、
アートの価値をしっかり理解した上でコレクションしていることがご理解いただけたのではないでしょうか。