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村上隆のどこがスゴいのか?
~日本に特有のオタク文化に付加価値をつけて海外に発信

現在、東京・六本木の森美術館で14年ぶりの大規模な個展を開催中の村上隆。
高さ3メートル、全長100メートルの「五百羅漢図」が話題の展覧会ですが、村上自身が数少ない日本が生んだ世界に通用する現代アーティストとして有名です。しかし、マンガやアニメといった日本のオタク文化をそのまま生かしたアートには賛否両論あり、そもそもどうしてここまで評価されるのかが分からない、といった意見も多いのが実情のようです。
では村上の何がいったいスゴいのか。
村上隆のアートを理解するポイントは、日本の美術を再解釈して英語に翻訳し、その延長線上に自身のアートを位置付けたことなのです。

マンガというと現代のサブカルチャーと思われていますが、村上は「鳥獣戯画」から「北斎漫画」といった日本の伝統の美術にまで遡って線で描く表現を日本の美と捉えます。そして戦後に入ってきたアメリカのマンガと融合することで現在のマンガやアニメに発展したと、正確な英語と専門用語を用いてきました。
日本の美を外国に翻訳したのは村上が初めて。岡倉天心が「茶の本」で日本の宗教的美意識を茶の湯に特化して紹介したことや、鈴木大拙が「禅」で西洋人に初めて分かりやすく仏教を説いたのと同様の業績なのです。
ですから村上の作品には、過去の美術を再解釈してアレンジするという特徴があります。
2009年に海外のオークションで16 億円で落札された「My Lonesome Cowboy」はフィギュアを等身大にした初めての彫刻ですし、「DOB」君はミッキーマウスをもじったといわれますが、それも真似というより新しいキャラの再創造といった方が適切です。
森美術館の「五百羅漢図」もそうした、過去の日本美術への理解と尊敬をもとに彼が新たに大絵画によって現代の様相を描こうとしているのです。そう考えると、村上のアートの背後にどんな美術が隠されているかを探るのが正しい、そして面白い見方かもしれません。

 

「村上隆の五百羅漢図展」
2015年10月31日(土)-2016年3月6日(日)

村上隆「Sphere white」

 

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