ひかりをほどく――大田和亜咲冝の描く、かけがえのない時間
大田和亜咲冝の作品を見ていると、私たちが普段どれほど多くの光に囲まれて生きているのかに、ふと気づかされます。
朝、木々の間から差し込む木漏れ日、窓辺に落ちるやわらかな影、夕暮れの中に静かに沈んでいく光、そして、夜の街に灯る人工の光。
それらは、日常の中にあまりにも自然に存在しているため、私たちはつい見過ごしてしまいます。けれど彼女は、その一瞬の光の表情を見逃しません。
光が立ち上がる瞬間、影が形を変える瞬間、そこに確かにあった時間の気配を、静かにすくい取るように描いています。
光と影のありかを求めて
今回の展示に向けて、大田和さんは「ひかりをほどく」という言葉を寄せています。
「私は長く、光と影のありかを求めながら絵を描いてきました。
光や影は、目に見える現象であると同時に、そこに確かに在った瞬間や、存在の痕跡を映し出すもののように感じています。」
この言葉には、彼女の絵画に向かう姿勢がよく表れています。
彼女の作品に描かれる光は、ただ明るいだけのものではありません。
そこには、消えていくものへのまなざしがあります。
二度と同じ形を見せることのない影、風に揺れる葉の隙間からこぼれる光、誰かが通り過ぎたあとの夜の街の灯り。
そうした刹那の出来事が、彼女の絵の中では静かに留まり、見る人の記憶の奥に触れてきます。
自然と都市、優劣のない光の美しさ
近年の作品では、自然の光と人工の光という、一見相反するものが共存しています。
木漏れ日のような穏やかな光は、私たちに安らぎを与えます。
一方で、夜の街に輝くネオンや街灯、建物の窓からもれる光は、人の営みや孤独、都市の温度を感じさせます。
彼女は、そのどちらにも優劣をつけません。
自然の光にも、人がつくり出した光にも、それぞれの時間があり、記憶があり、そこに生きる人の気配がある。
そのことを、女性作家ならではの繊細な感性で丁寧に描き出しています。
彼女の描く光は、強く主張するものではありません。
けれど、見ているうちに少しずつ心に染み込んでくる力があります。
柔らかな木漏れ日を描いた作品には、自然の中でふと立ち止まったときの安らぎがあります。
人工の光に照らされた街の作品には、人の営みが続いていることへのあたたかさと、夜の静けさの中に浮かび上がる美しさがあります。
絵筆が触れる、光の輪郭
作品の前に立つと、光を描いているはずなのに、同時に影を見ていることに気づきます。
明るさの中にある静けさ。影の中に残るぬくもり。見えているものと、見えなくなってしまったもの。
そのあわいに、大田和作品の深い魅力があります。
彼女はこうも語っています。
「描くことは、光の輪郭に静かに触れていく時間です。」
光は本来、手で触れることのできないものです。
けれど彼女は、絵筆を通してその輪郭に触れようとします。
つかまえようとすれば消えてしまうものに、急がず、強く押さえつけず、そっと近づいていく。
その静かな姿勢が、作品全体にやさしい緊張感を生んでいます。
日常の豊かな瞬間を思い出す
《光の宿り》油彩 6号 大田和亜咲冝さんとは、私たちも長くお付き合いをしてきました。
作品を重ねるごとに、その視線はより深く、より澄んでいったように感じます。
華やかさで強く訴える絵ではありません。
しかし、しばらく見ていると、心の中にゆっくり光が入ってくる。そんな絵です。
忙しい日々の中で、私たちは光の移ろいを立ち止まって見る時間を失いがちです。
けれど、彼女の作品の前に立つと、何気ない日常の中にも、こんなにも豊かな瞬間があったのだと思い出させてくれます。
新作展で出会う、光と影の世界
今回の展示販売会「ひかりをほどく」では、大田和亜咲冝さんが見つめてきた光と影の世界を、まとまった形でご覧いただけます。
柔らかな木漏れ日、人工の光に照らされた街、移ろいゆく影のかたち。
そのひとつひとつに、かけがえのない時間が宿っています。
ぜひ会場で、作品の前に立ってみてください。
絵の中の光が静かにほどけるように、あなた自身の記憶や感情にも触れてくるはずです。
大田和亜咲冝が繊細な感性で描き出す、魅力あふれる光の世界を、ぜひこの機会にご覧ください。

翠波画廊代表 髙橋芳郎
株式会社ブリュッケ(翠波画廊)代表取締役。
美術大学卒業後、都内の画廊での修行を経て、1990年に独立。 2001年、故郷の秀峰の名を冠した「翠波画廊」をオープンさせる。
以降長きにわたり、ピカソ、マティス、藤田嗣治、ユトリロ、ローランサン等フランスの近代巨匠から、
ウォーホル、キース・へリング等現代アートまで幅広く扱う。
【7/25(土)から】大田和亜咲宜 新作展

日常に宿る光の情景を描く人気画家 大田和亜咲宜 新作展 2026
光と影が織りなす日常の風景を、独自のまなざしで描き出す大田和亜咲宜。
繊細な光の移ろいと静かな空気感を描いた作品は、日本のみならず海外でも高い評価を受け、近年ますます注目を集めています。
本展では、「ひかりをほどく」をテーマに、移ろいゆく光や影の中に宿る気配や、かけがえのない時間を描いた新作を発表いたします。新作100号の大作から飾りやすい小品まで約20点を展示・販売いたします。
光が紡ぐ静かな世界を、ぜひ会場でご高覧ください。
【東京銀座店】会期|7月25日(土)〜8月8日(土)*作家来場&水彩ワークショップ開催 7月25日(土)
【大阪梅田店】会期|8月13日(木)〜8月26日(水)
大田和亜咲宜 作品一覧はこちら>>
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《集光》油彩 8号
《移ろう刻》油彩 8号
《光の刻印Ⅰ》油彩 6号