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日本が生んだ世界的画家として、海外で高い知名度を誇る藤田嗣治。
晩年はレオナール・フジタと改名して、フランス国籍になったため、フランスでも「我が国の画家」として愛されています。
そんな藤田嗣治の評価が、再び高まっていると感じられる出来事がありました。
先日(2017年5月)、アメリカのオークションに、藤田嗣治の晩年の油絵が出品されました。
「猫を抱く少女(Fillette au chat)」と題された18×14cm(0号)の小品です。
1953年、数え年で68歳の藤田が描いたものです。
著作権の問題と落札者への配慮から、このページで画像をお見せすることはできないのですが、アパルトマンか何かの屋上に、ペルシャっぽい猫を両手で抱いた幼女が立っていて、その背景には柵越しにフランスの街並みが見えるというものです。
色数はそれほど多くないのですが、空と服の青色を基調に、少女の被る帽子と襟元の赤が対比されていて、一目で気に入りました。
この藤田嗣治の絵を仕入れようと、早速、入札を検討しました。
オークション会社がつけた落札予想価格は、8万~12万ドル(896万~1344万円)です。
このところの業者間オークションでは、藤田嗣治の晩年の小品は、良い作品の場合、だいたい2200~2700万円で取引されています。
今回の絵には、人気モティーフの猫が描かれています。それを考慮すると3000万円は覚悟しなければと考え、書面入札を決意しました。
▲海外オークション(イメージ)
といっても、落札価格で3000万円の場合、オークション会社に支払う手数料が25%近くかかり、さらに日本に輸入する際に、税関で消費税8%を支払う必要があります。そうなると支払額は4050万円になり、さらに作品を送る送料と配送の際の事故に備えての保険料がかかります。
オークションで絵画を購入するときには、入札価格以外の経費も考慮しないと、思わぬ出費になってしまいます。
そこで、もろもろ込みで3000万円に収まるように調節して、20万ドルで入札を行いました。
私としては、かなり気張った価格で、おそらく落札できるだろうと踏んでいました。
ところが、当日のオークションではどんどん値が吊り上り、最終的な落札価格は27万ドル(約3024万円)になってしまいました。
手数料込みだと33万6500ドル (3769万円)で、近年、オークションに出品された藤田嗣治の小品の中では、かなりの高額落札です。また、日本人が落札したとするなら消費税が課されるので、支払額は4000万円を超えます。
当初の予想価格の2~3倍になったので、売主は喜んだことでしょう。
オークション会社の担当者もプロフェッショナルですから、落札価格と予想価格が大きく離れることはあまりなく、今回の高額落札はちょっとした話題になりました。
私自身が落札できなかったことは残念ですが、藤田嗣治の評価が高まっているのかなと思うと、嬉しい出来事です。
現在、新潟県立万代島美術館で「レオナール・フジタとモデルたち」と題された美術展が開催されています(6月24日から9月3日)。
▲新潟県立万代島美術館HPより
また、富山県が県立美術館のために2億1600万円で、藤田嗣治の乳白色時代の作品「二人の裸婦」(1929年、178×94cm)を購入することにしたというニュースも目にしました。
藤田嗣治のファンの一人として、近年の再評価は耳に心地よいことですが、評価が高まると入手が難しくなるので、若干、複雑な心境でもあります。
藤田嗣治の作品の入手を考えている方は、ぜひ今のうちに1枚いかがでしょうか。
そうでない方も、画集や美術展で作品に触れていただければ、幸いに存じます。
翠波画廊で取り扱っている藤田嗣治の作品はこちらのページで見ることができます。
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