アートコラム

バンクシーが影響を受けたアーティストとは?

2019/10/08

2019年10月3日、イギリスのオークションでバンクシーの絵画『自治議会』が約13億円で落札されました。バンクシーのオークション価格の記録更新です。
引き続き、盛り上がっているストリートアートシーンについてお届けします。
ヒップホップ文化などとのかかわりがあるため、ストリートアートの本場はアメリカだと思われていますが、話題のバンクシーはイギリス人アーティストです。
また、ストリートでアートを見せる活動の始まりは、ダダやシュルレアリスムに影響を受けたフランスの国際状況主義連盟運動だと言われています。実際、フランスには有名なストリートアーティストが多数います。
今回は、フランスのストリートアーティストの紹介です。

 

 

「ステンシルグラフィティの父」と呼ばれた男

バンクシーといえば、切り抜きの型紙を壁にあててスプレーするステンシルの技法と、東京都の防潮扉で見つかったようなネズミの絵がトレードマークです。
しかし、バンクシーが活動を始める2000年代よりももっと前から、ステンシルの技法を用いて、黒いネズミの絵を路上にたくさん残していたストリートアーティストがいるのです。
その名もブレック・ル・ラット(Blek le Rat)。
ラットの名前はもちろんネズミのラット(Rat)であり、アート(Art)のアナグラム(文字の並び替え)でもあります。
ブレック・ル・ラットは、その名前からもわかるようにフランス人です。
ストリートアートを始めたのは、バンクシーより20年も前の1981年。パリにおける最初期のグラフィティアーティストの一人であり、素早く作品を残すことができるステンシルを取り入れたことから「ステンシルグラフィティの父」とも呼ばれています。
ブレック・ル・ラットが初めてパリの街路にステンシルを用いて描いたのが黒いネズミでした。街のどこにでも潜んでいて神出鬼没に出現するネズミの自由さにストリートアートの理想を見たからです。
ブレック・ル・ラットは、バンクシーをはじめとするその後のストリートアーティストに多大な影響を与えました。バンクシー自身がコメントでブレック・ル・ラットからの影響を認めています。
もちろん、ブレック・ル・ラットとバンクシーはまったく同じではありません。正体不明のバンクシーと異なり、ブレック・ル・ラットは本名がXavier Prouであり、1951年にパリで生まれたフランス人であることがおおやけになっています。
というのも、ブレック・ル・ラットは1991年にストリートアートを制作中、警察に現行犯逮捕されて身元を調査されたからです。そのとき彼がステンシルで描いていたのは、カラヴァッジオの≪ロレートの聖母≫でした。
以後、ブレック・ル・ラットはさらに迅速にストリートアートを制作できるように、事前にステンシルで描いた紙のポスターを街路に貼るスタイルに変わりました。ポスターなら糊で貼るだけなのですぐに終わりますし、万が一捕まったとしてもすぐに剥がせるので罪が軽くなるからです。
現在、68歳のブレック・ル・ラットは、いまだストリートアートの活動を続けていて、多くの人から尊敬を集めています。

書籍『Blek Le Rat: Getting Through the Walls』Thames & Hudson

 

 

街中に出現する巨大な顔の正体は?

ブレック・ル・ラットの影響を受けたのはバンクシーばかりではありません。
1983年生まれで、著名なストリートアーティストの中では最年少の世代に属するJRは、大きく引き伸ばした写真のポスターをパリの街路に貼って回るという行為で一躍時の人になりました。
JRといえば、日本では旧国鉄のJapan Railwaysのことですが、海外ではこの若きフランス人アーティストの名前として知られています。
なぜならば彼の業績は、世界的な講演会であるTEDカンファレンスで大々的にプレゼンテーションされて、その動画「アートを通して世界をひっくり返す」は、2011年のTEDプライズ(最優秀賞)を受賞したからです。同賞の過去の受賞者には、ロックバンドU2のボノや、ビル・クリントン元米大統領などがいます。
JRのアートは市井の人々の表情豊かな顔写真をモノクロで大きくプリントして、街中に貼りつけていくものです。当初は、自分の撮影した写真を「最も大きなギャラリー」である公共の街路に貼ることで多くの人に見てもらいたいというものでしたが、次第に別の意味を持ち始めました。パリの貧困層の子どもたちの生き生きとした顔写真を、富裕層の住む地区に貼ることで、両者の分断と融和を示唆するメッセージが込められたのです。
JRのアートはもちろん当初は違法なものでしたが、パリ市がその価値を認めて公共の建物に写真を展示してからはとがめられることはなくなりました。
やがてJRは海外にもその活動を広げて、紛争の続くイスラエルとパレスチナを分断する分離壁の両側に、両者の大きな顔写真を並べて貼るパフォーマンスを行いました。しかも、双方から同じ職業(タクシー運転手とか清掃人とか)の人を選んで、並べたのです。
「イスラエル人もパレスチナ人も、どっちがどっちか見分けがつかない」「私たちは同じように笑う同じような人間だ」ということを示唆するこのアートは大きな反響を呼びました。
2011年のTEDプライズを受賞したJRは、賞金の10万ドルを使って「世界を変革する」ためのInside Outプロジェクトを始めました。このプロジェクトでは、世界中の人々が主役となります。参加を希望する人が自分自身の顔写真を撮影してJRに送ると、それを大きく引き伸ばしたモノクロのポスターが返ってきます。そのポスターを街中の好きなところに貼ることで世界に何らかの価値を与えることができます。
以降もJRの活躍はとどまるところを知りません。2016年にはルーブル美術館の依頼で、美術館前の有名なピラミッドにマジックのような装飾を施しました。
2017年には「ヌーヴェル・ヴァーグの祖母」と呼ばれる映画監督アニエス・ヴァルダとともに映画『顔たち、ところどころ』を監督しました。この映画は2018年のアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞に選出されました。

書籍『JR: Inside Out』Rizzoli

 


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世界中でインベーダーの侵略が始まっている

1951年生まれのブレック・ル・ラットと、1983年生まれのJRとをつなぐ存在が、1969年生まれのインベーダーです。
インベーダーといえば、1970年代から80年代にかけて世界中で大流行したコンピューターゲーム「スペースインベーダー」でしょう。
アーティストのインベーダーは、このゲームのキャラクターである「インベーダー(地球侵略に来た宇宙人)」の絵を街中に貼るストリートアートで有名になりました。
ストリートアートはたいてい匿名でこっそりと行われますから、インベーダーという名前も、彼の作品からいつのまにかそう呼ばれるようになったものです。
当時のコンピューターゲームは、テクノロジーの限界からキャラクターを16×16ドットで描いていました。インベーダーはドット絵と呼ばれるそれらのキャラクターに愛着を持ち、色タイルを並べて作品を作り、それを街中に強力接着剤で貼りつけるというストリートアートを敢行しました。
インベーダーのストリートアートは、最初は散発的なものでしたが、1998年からは特定の都市に集中的に作品を貼りつけて回る「インベージョン(侵略)」というプロジェクトを定期的に行うようになります。
最初の標的にしたのはパリでしたが、以降フランスの各地方の31都市、ニューヨーク、香港、ロサンザルス、ロンドン、ローマ、ベルリン、バルセロナ、東京など各地で「インベージョン」を行いました。その結果、それらの都市では今でも小さなインベーダーをそこかしこで見ることができます。
2011年に公開された情報によれば、77の都市に2692個の「インベーダー」を残したそうです。その材料となるセラミックタイルの使用総数は約150万個になります。各都市のどこで「インベーダー」を見ることができるかを記した「侵略マップ」も発行され、ファンの楽しみとなっています。
しかし、作品の何割かは建物の所有者によって撤去されたり、悪いファンによって持ち去られたりして、現在では見ることができません。保存が適切になされないのは、ストリートアートの宿命かもしれません。
すでにベテランの域に達したインベーダーは、バンクシーの監督した映画『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』(2010年のアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞に選出)にも出演しています。この映画でとりあげられているアーティスト、ミスター・ブレインウォッシュ(洗脳)が、インベーダーの従兄弟という設定だからです。

書籍『L’Invasion de Paris (Invasion Guide)』Franck Salma

 

そしてバンクシーと同様、インベーダーもストリートアート以外の作品を制作して販売しています。作品が欲しい方は、東京に残された「インベーダー」を持ち去るのではなく、正規ルートで購入するようにしましょう。もちろん翠波画廊もインベーダーの作品を取り扱っています。

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