アートコラム

価値があるから高いのか、価格が高いから価値があるのか?

2017/08/24

当社で扱っている絵画の中には美術史に名を遺す、ピカソ、シャガール、ユトリロ、藤田嗣治などがあります。
そのような20世紀初頭に活躍した巨匠の作品は、100年近い年月をかけて少しずつ値段が上がってきました。その理由はなんといっても、彼らの作品が世界中の人々を感動させる力を持っていて、見る人を魅了するからです。

 

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▲ピカソ「闘牛(オリジナル・セラミック)」1957年

さらに2010年頃から世界中の国々がマネーサプライ(通貨供給量)を増やしたことで、価格の高騰はさらに加速しました。10年前までは、数千万の単位で購入できるピカソやシャガールの油彩がありました。しかし、今ではその多くが億の単位に跳ね上がり、数千万単位で購入できるピカソやシャガールの油彩を探すのは、駄作を除けば至難の業となってしまいました。

 

購入する人の中には、画家のブランド力にあこがれて所有する人もいるでしょう。しかし多くの人は、作品そのものが芸術的価値をもっていて魅了されたからこそ、価格が高くても自分のものにしたいという欲求を持つのです。そのような人々がオークションで競い合うために、価格が上がっていくのです。

 

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▲ヴラマンク「村の道」油彩 15号

また、どんなに需要があっても、作家の死後は、世の中に流通する作品数が増えていくことはありません。描かれた数は限られているので、正常な需給関係の結果として、年月とともに価格が上がってきたわけです。今後、世界の価値観が変わるようなパラダイムシフトが無い限り、20世紀フランス巨匠の作品の価値が下がるようなことはないのではないでしょうか。むしろ時を経てますます輝きを増し価値を高めていくように思います。

 

ところが近年、アメリカ、ヨーロッパ、中国で、それまであまり世に知られていなかった現存の画家の作品が、いきなり数千万の単位で取引される例が増えています。こうなってくると、どのような価値に裏付けされた価格なのかがわからなくなります。逆に価格が高いから価値があると言わせたいのかのようです。価格が先にあるのか、価値が先にあるのか、まるで卵が先か鶏が先か、のようなパラドックスに陥ってしまいます。

 

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▲ルオー「大太鼓の前の曲馬団の娘」油彩・グワッシュ 1929年

しかし、芸術的価値に裏付けされた価格こそが本当の価格なのではないでしょうか。芸術的価値とは、時を経ても色あせることなく、見る人に感動を与える力のことです。作品と向き合ったときに得られる豊かな時間や、その時の幸福感がどれだけ大きいかによって、芸術的価値は決まります。そして芸術的価値に魅せられた人々が、何としても自身の所有物にしたいと競いあう中で決まってくるものが本当の価格ではないでしょうか。

 

高い価格で価値を演出したり、高い価格で人々の関心を引いたりは、マーケティングの手法としては実にうまいやり方かもしれませんが、芸術的価値とは関係がありません。私の言うことが正しいか否かは、時間の経過が解明してくれることでしょう。

 


芸術はよくわからない、アートは難しいなどと思っていませんか?

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読後はアートを身近に感じて美術館に行ってみたくなるはずです。

 

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