アートコラム

どんな画家が、紙幣の顏になっているの?(5)欧州・番外編

2019/04/17

日本政府は新元号「令和」に続いて、2024年の新紙幣発行を発表しました。
新紙幣の肖像画には、渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎の3名が予定されています。
残念ながら今回も画家は入りませんでしたが、千円札の裏面には葛飾北斎の富嶽三十六景が印刷されるそうです。
紙幣の肖像画は、まさにその国の顔です。
フランスではセザンヌやドラクロワ、イタリアではラファエロやカラヴァッジオ、オランダではレンブラント、スペインではベラスケス、ノルウェーではムンクが、その国を代表する画家として紙幣に印刷されてきました。
ヨーロッパでは、他にどのような画家が紙幣に登場しているでしょうか。

 

ベルギーの表現主義のリーダーとは?

ベルギー1000フラン紙幣
(コンスタン・ペルメーク)

以前の記事「どんな画家が、紙幣の顏になっているの?(2)欧州編」では、ベルギーの紙幣に登場する画家として、ジェームズ・アンソールとルネ・マグリットの2人の近代画家を紹介しました。
両名ほどの国際的な知名度はありませんが、ベルギーでは非常に愛されている画家がもう一人、紙幣に登場しています。
その名はコンスタン・ペルメーク。
アンソールやマグリットらとともに、フランドル表現主義を主導した画家・彫刻家です。アンソールが100フラン紙幣、マグリットが500フラン紙幣であるのに対し、ペルメークは1000フラン紙幣ですから、考えようによっては最も格上です。

コンスタン・ペルメーク(1886-1952)
『毎日のパン』

もちろん、3人ともベルギーに個人美術館を持つ人気画家です。ちなみに、マグリット美術館は首都ブリュッセルに、アンソール美術館は海沿いの街オステンドにあります。ペルメーク美術館はオステンデの隣にある小さな町ヤベックにあります。ここは画家が晩年を過ごした家でした。
ペルメークの絵は、農民や漁師などの労働者を力強い線で描いたものが多く、共産主義をイメージさせるものが多かったためか、ナチスがベルギーを占領した際に弾圧されました。理想の美を表現しない退廃芸術と見なされたのです。
ナチスに屈せずに芸術活動を続けたペルメークはその思想も賞賛されています。ペルメークの生涯は、1985年のドキュメンタリー映画『ペルメーク』(日本未公開)にまとめられています。
ちなみに彼は1886年生まれですから、日本でいえば藤田嗣治と同年の生まれになります。

 

 

ウクライナの二宮尊徳とは?

ウクライナ旧100フリヴニャ紙幣
(老いたタラス・シェフチェンコ)

次に東ヨーロッパに目を向けてみましょう。
クリミア半島の領有権をめぐってロシアとの関係がきな臭くなっているウクライナには、タラス・シェフチェンコという国民的画家・詩人がいて、紙幣の顔になっています。
このシェフチェンコは画家ばかりでなく詩人としても優れていて、ウクライナ近代文学の始祖と高く評価されています。

タラス・シェフチェンコ(1814-1861)
『キャサリン』

ロシア帝国の支配に対してウクライナの農奴を解放しようと政治運動も行い、皇帝を批判する詩を書いたために、合計10年間流刑の憂き目にあいました。流刑の間はペンも筆も禁止されたそうですから、さぞ辛かったことでしょう。
釈放後も秘密警察の監視下にあったといわれるシェフチェンコは、流刑中に患ったリウマチと心臓病のため、47歳で亡くなりました。
上記のような経歴からウクライナ国内での人気が非常に高く、キエフを始め、数多くの都市にタラス・シェフチェンコの銅像が建てられています。

ウクライナ新100フリヴニャ紙幣
(若いタラス・シェフチェンコ)

ウクライナ国内だけでなく、アメリカやカナダやアルゼンチンなど、ウクライナ移民の多い街には必ずといっていいほどタラス・シェフチェンコの銅像があるそうです。日本で言うところの二宮尊徳(金次郎)でしょうか。
1814年生まれのシェフチェンコは、フランスで言えばミレーと同い年になります。
また、ウクライナは2006年に紙幣をリニューアルしましたが、肖像に選ばれた人物はそのままにデザインだけを変更したので、コインショップに行くと2種類のタラス・シェフチェンコ紙幣を見ることができます。

 


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エストニアの画家を一人でも知っていますか?

エストニア1クローン紙幣
(クリスチャン・ラウト)

最後にバルト三国の中から、エストニアを紹介しましょう。
フィンランド湾に面するエストニアは、北欧文化にも近く、自由な社会と学力の高さで知られています。また、インターネット電話のSkype(スカイプ)を生んだIT国家としても有名で、近年はITの活用による電子政府や、仮想通貨を利用したキャッシュレス社会などの実現を推進しています。
クリスチャン・ラウトはエストニアの象徴主義の画家です。1865年生まれで、同じく象徴主義のムンクやクリムトと同世代です。

クリスチャン・ラウト(1865-1943)
『宣誓』

当時の画家は、ドイツのミュンヘンか、フランスのパリに留学した人が多いのですが、クリスチャン・ラウトはミュンヘン派です。
エストニアに戻ったクリスチャンは、エストニアの民族に興味を持ち、エストニア国立博物館(ナショナル・ミュージアム)の設立運動を行い、創設者の一人となりました。後にはエストニア博物館協会の会長にも選ばれています。
クリスチャン・ラウトの双子の兄弟ポール・ラウトも著名な画家で、エストニアの美術学校の教師となっています。

※他の欧州の画家紙幣についてはこちらをご参照ください。

 

どんな画家が、紙幣の顏になっているの?(1)イタリア編 >>

どんな画家が、紙幣の顏になっているの?(2)欧州編 >>

どんな画家が、紙幣の顏になっているの?(3)女性画家編 >>

どんな画家が、紙幣の顏になっているの?(4)アジア・英米編 >>

 


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