今回の移転は、東京都による京橋地区の再開発によって、やむを得ず決まったものでした。
京橋店は23年間にわたり、数多くの展覧会やお客様との出会いを重ねてきた場所です。
その京橋店をオープンする以前は、銀座のビルの２階で営業を行っていました。
路面店としての営業を始めたのが京橋からでした。

京橋店は映画やテレビドラマの撮影にも度々使われ、画廊としてだけでなく、ひとつの「場」として多くの記憶が刻まれてきました。
そんな思い出深い場所を離れるのは、まるで大切にしてきた持ち物に別れを告げるような寂しさがありました。
移転作業はとても大変でしたが、何より大変だったのは、単なる引っ越しではなく“思い出の選別作業”でもあったことです。
長年蓄積してきた作品や資料、空額（からがく）などを手放すたびに、
「あの作品はあの展覧会で展示したな」
「この額は、亡くなったドウツの作品を入れるために作り置きしていたな」──
そんな思い出が次々とよみがえります。

在庫整理を兼ねた移転セールでは、多くの方々にご来場いただき、
「京橋店に最後に行けてよかった」
「新しい銀座店も楽しみにしています」
と温かい言葉をいただきました。
その声に背中を押されるように、私たちは銀座での新しい一歩を踏み出しました。
そして、やはり“銀座”という場所は特別です。
街を歩くだけで感じる文化の香り、一流のものが自然と集まる磁力のような空気。
ここでは、芸術作品を扱うことの責任と誇りを、これまで以上に強く感じます。
ありがたいことに、移転から間もなく、テレビ局から「画廊を番組撮影に使いたい」という依頼もありました。
京橋店の時代を大切に胸に刻みながら、これからも銀座で新しい歴史を積み重ねていきたいと思っています。

「絵は好きだけど、どう見ればいいのか分からない」
その戸惑いは、ロマン主義以降の “心で味わう鑑賞” と、現代アートの “意図を読み解く鑑賞” が同じ空間に並び立つ二重構造に理由がありました。
本書はその経験を凝縮した、待望の4作目です。
絵を見る喜びとはどこにあるのか。なぜ人は作品に惹かれるのか。日々お客様と作品の前で交わしてきた視点や気づきをもとに、アートが持つ魅力と価値を、専門知識に頼らず読み解いていきます。

単行本：228ページ
出版社：晶文社
著者：髙橋芳郎

価格：1,870円（税込）

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