【再掲】ワンマイザーの作品にあふれるロック精神
~ピカソもバンクシーも超えてやる

今年10月より大阪梅田店を皮切りに来日展を開催するワンマイザー。
フランス出身のアーティストですが、その作品には日本のサブカルチャーへの愛が満ちています。
今回の来日では、国内外で人気のある日本のゲームキャラクターを用いて作品を制作してくれました。
フランス生まれのワンマイザーは、日本のサブカルチャーのファンでもあるのです。
2年ぶりの来日を機に、前回ご好評いただいたコラムを再掲し、ワンマイザー作品の魅力をもう一度じっくりご紹介いたします。
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バンクシー+ピカソ=ワンマイザー?

ワンマイザーはサブカルチャーだけでなく、アートなどのメインカルチャーの参照も積極的におこなっています。
たとえば、木材に描かれたワンマイザーの新作《バンクシー VS ピカソ》には、バンクシーとピカソという二大巨頭の絵が引用されています。
中央に配置されたモノクロームの男性は、ステンシルで制作されたバンクシーの《花を投げる男》です。
バンクシーの作品は、政治的な抗議行動がエスカレートして暴動になり、火炎瓶を投げる男をモチーフに、火炎瓶を花に変えて平和的なデモを呼び掛けたものです。
さらにワンマイザーの作品では、男性が手に持って投げようとしている花が、ピカソの描いた《花の女》に変えられています。
ピカソ《花の女》は、ピカソの子どもを二人生んだ愛人のフランソワーズ・ジローを描いたものです。
2023年に101歳で亡くなったフランソワーズ・ジローは、ピカソを振った唯一の女性と言われているので、そうとう強い「花」であったことでしょう。
この絵にも「ROCK」の文字が上部に描かれています。
ワンマイザー VS. ムンク
ムンク《ビートルジュース VS ムンク》は、あの有名な《叫び》を大胆にパロディ化した作品です。
画面奥に描かれている芋虫のようなモンスターは、世界的に人気を誇るホラーコメディ映画『ビートルジュース』の主人公、ビートルジュース。
人間を追い出す「バイオ・エクソシスト」の仕事をしているビートルジュースが蛇に化けた姿が描かれており、作品に奇妙な愛嬌を与えています。
オリジナルの《叫び》では、叫んでいるように見える人物は、実は自然の叫びの幻聴に脅かされ、耳をふさいでいるムンク自身の姿とされています。
それに対して本作では、ビートルジュースに驚かされて恐怖におののく様子が、コミカルかつ親しみやすく描かれています。
哲学的な原作の構造を逆手に取り、視覚的なユーモアへと昇華させる発想は、まさにワンマイザーらしいエスプリ。
ムンクが描いた「目に見えない不安」を、ワンマイザーは「見える脅威」として具現化しており、同じテーマでもアーティストが変わることで、作品の印象がこれほどまでに変化することを改めて感じさせてくれます。
ワンマイザー《ビートルジュース VS ムンク》
ムンク《叫び》
ワンマイザーがピカソの絵を描いたら?
今回新たに入荷した作品《眠る者たち》には、ピカソの《夢》(原題:Le Rêve)に登場する、赤い椅子に腰かけて眠る女性が引用されています。
その女性の腕の中には、ポケットモンスターのキャラクター「カビゴン」が描かれており、作品にユーモラスなアクセントを添えています。
カビゴンは「いねむりポケモン」に分類され、英語名は“Snorlax”。その名前は、いびきを意味する“snore”と、リラックスを意味する“relax”を組み合わせたものとされています。
ピカソがキュビズム期に制作した《夢》は、当時の愛人マリー・テレーズ・ウォルターをモデルにした作品として知られています。
本作では、その象徴的な眠る女性と、いねむりポケモン・カビゴンが大胆に融合され、近代巨匠と現代カルチャーが交差するワンマイザーならではの一作となっています。
ワンマイザー《眠る者たち》
ピカソ《夢》(原題:Le Rêve)
ディズニーのミッキーマウスへの挑戦状

同じくストリートアート出身のカウズのように、ワンマイザーも『ザ・シンプソンズ』や『ルーニー・チューンズ』などアメリカのアニメを好んで引用していて、そのなかにはあのディズニーアニメも含まれています。
ワンマイザー《バートのおもちゃ》には『ザ・シンプソンズ』のバート・シンプソンと、ディズニーのミッキーマウスが描かれています。また、バートは壁にスプレーでミッキーマウスのシルエットのようなグラフィティを描いています。
以下に説明するように、この絵はたいへんにロックです。
ディズニーはたいへん版権管理に厳しい会社です。
たとえば、ミッキーマウスが初めて世に出たのは1928年の短編アニメ「蒸気船ウィリー」でしたが、当時の著作権保護期間は「作品発表から56年間」であり、ミッキーマウスは1984年からパブリックドメインとして誰でも使用が可能になるはずでした。
そこでディズニーは政治家へのロビー活動を展開し、「作品発表から75年間」への延長を認めさせます。これによってミッキーマウスの著作権保護期間は2003年まで延びました。
さらにディズニーがロビー活動を継続したため、1998年にアメリカの議会で著作権延長法が成立しました。別名「ミッキーマウス延命法」とも呼ばれるこの法律の内容は、著作権の保護期間を、法人著者の場合は「発行後95年間」または「制作後120年間」のどちらか短い方とするものです。これによって、ミッキーマウスの保護期間は2023年まで延長されました。
ディズニーはさらなる延長を求めてロビー活動を続けましたが、今回はとうとう政治家もノーを突きつけたそうです。
ということで、初期ミッキーマウスは2024年からパブリックドメインになるのですが、本作品が描かれたのは2023年です。
それなのにワンマイザーはミッキーマウスを堂々と描いたうえに、下品さで知られるアニメのキャラクター、バート・シンプソンを使って、そのシルエットが男性器に見えるようにイタズラさせてしまったのです。
ロックですね。
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