アートコラム

美術品オークション高額落札ランキング【2020年最新版】

2020/02/10

2019年も美術品業界は活況で、価格は上昇を続けました。
例えばオークションでは、モネの連作絵画≪積み藁≫シリーズの一つが1億1070万ドルで落札されて、美術品落札記録のオールタイムベスト10に入りました。
この落札価格記録は年々更新されるので、数年前の記録を見ると隔世の感があります。
今回は、オークションにおける美術品落札レコードを調べてみました。

 

2013年時点の美術品落札記録は?

ムンク≪叫び≫1893年
(テンペラとクレヨン、オスロ国立美術館)

今から7年前、2013年初における美術品オークションの過去最高記録は、ムンクの≪叫び≫で1億1990万ドルでした。
ムンクの≪叫び≫は小学校の図工教科書にも載るほどの有名作品ですが、実はこのタイトルを持つ絵画は5枚あることをご存じでしょうか
最も有名でよく引用される≪叫び≫の絵は、最初に作られたもので、厚紙にテンペラとクレヨンで描かれています。
この作品は「盗まれた絵」としても知られています。
描かれてから100年後の1994年に、ムンクの故郷であるノルウェーのオスロ国立美術館で盗難にあいました。国立美術館ですから警備員はいたものの、警報が鳴っても誤作動と思って確認しなかったそうです。3カ月後、金銭取引を持ちかけてきた犯人を騙して捕まえて、絵は無事に戻りました。

 

ムンク≪叫び≫1910年
(テンペラ、オスロ市立ムンク美術館)

最初に描かれた≪叫び≫(1893)のほかにも、厚紙にクレヨンで描かれた≪叫び≫(1893)、厚紙にパステルで描かれた≪叫び≫(1895)、モノクロのリトグラフの≪叫び≫(1895)、そして厚紙にテンペラで描かれた≪叫び≫(1910)、の4作品があります。
実は、最後に描かれた≪叫び≫(1910)のほうも、2004年に盗まれています。ムンクの≪叫び≫はどれだけ人気なのでしょう。
≪叫び≫の2度目の盗難は、オスロ市立ムンク美術館に拳銃を持った強盗が押し入り、観客の前で絵を奪っていったという劇的なものです。隣に飾られていたムンク≪マドンナ≫も同時に奪われました。
このときは絵はなかなか見つからず、2年後の2006年、オスロ警察の威信をかけた大捜査によってようやく発見されましたが、保存状態が悪くて損傷が激しく、その後の修復にさらに2年間を要して、2008年にようやく展示再開されました。

 

ムンク≪叫び≫1895年
(パステル、1億1990万ドルで落札)

さて、美術品オークションの落札記録となったのはそのどちらでもなく、厚紙にパステルで描かれた≪叫び≫(1895)です。
美術館に収蔵された作品はもう市場に出回りませんが、このパステル画バージョンの≪叫び≫だけは個人が所有していて、2012年にオークションにかけられたのです。落札価格は手数料込みで1億1990万ドル(当時のレートで約96億円)でした。

 

2013年初時点での絵画オークションの落札記録トップ3は以下のとおりでした。なお、ここで示した価格は純粋な落札価格ではなく、オークション手数料を含むものです。

 

美術品オークション落札記録(2013年1月時点)
1.ムンク≪叫び≫(パステル画)1億1990万ドル(2012年)
2.ピカソ≪ヌード、観葉植物と胸像≫1億650万ドル(2010年)
3.ピカソ≪パイプを持つ少年≫1億420万ドル(2004年)

 

2016年時点の美術品落札記録は?

ピカソ
≪アルジェの女たち(バージョンO)≫1955年
(1億7940万ドルで落札)

2013年初時点での落札記録を見ると、トップ3のうち2作品がピカソと、その人気のほどを見せつけています。実はトップ5を見ても、そのうち3作品がピカソの絵でした。
このように人気のピカソが、落札価格レコードのトップを奪うのは時間の問題でした。
2015年、ピカソの≪アルジェの女たち(バージョンO)≫が1億7940万ドル(当時のレートで約215億円)で落札されて、オークション記録を塗り替えました。

 

ドラクロワ≪アルジェの女たち≫1834年
(ルーブル美術館)

この作品を描いた当時のピカソは、古典作品の主題を自分なりに描き直すことに熱中していました。元になった作品は、フランスの巨匠ドラクロワの描いた≪アルジェの女たち≫です。

 

アルジェとは、フランスの植民地になった北アフリカのアルジェリアの首都です。≪アルジェの女たち≫ここに住むアラブの富豪のハーレム(イスラム教の一夫多妻の家庭における婦人部屋)を描いたものだと言われています。
地中海に面したアルジェリアは、アフリカといってもイスラム教徒のアラブ人が多く、ホワイトアフリカと呼ばれています。
ピカソは女性たちの肌の露出を多く描くことで、ドラクロワが巧みに隠した性的な雰囲気をあらわにしました。

 

2016年初時点での絵画オークションの落札記録トップ3は、2013年と比較してまるっきり新しくなりました。3年間のうちに、記録的な高額落札が相次いだのです。

 

美術品オークション落札記録(2016年1月時点)
1.ピカソ≪アルジェの女たち(バージョンO)≫1億7940万ドル(2015年)
2.モジリアーニ≪横たわる裸婦≫1億7040万ドル(2015年)
3.ベーコン≪ルシアン・フロイドの3つの習作≫1億4240万ドル(2013年)

 

2020 年現在の美術品落札記録は?

では、現在はどうなっているでしょうか。
世界で最も高額な絵画の座は、4億5030万ドル(当時のレートで約510億円)という圧倒的な価格でレオナルド・ダ・ヴィンチ≪サルヴァトール・ムンディ≫が更新しました。
トップ10ランキングは以下のとおりです。
なお、このランキングには取引価格が明確にならない個人間取引は含んでいません。あくまでもオークションでの落札データのみを集計しています。

 

美術品オークション落札記録(2020年2月現在)
1. ダ・ヴィンチ≪救世主(サルヴァトール・ムンディ)≫4億5030万ドル(2017年)
2. ピカソ≪アルジェの女たち(バージョンO)≫1億7940万ドル(2015年)
3. モジリアーニ≪横たわる裸婦≫1億7040万ドル(2015年)
4. モジリアーニ≪(左向きに)横たわる裸婦≫1億5720万ドル(2018年)
5. ベーコン≪ルシアン・フロイドの3つの習作≫1億4240万ドル(2013年)
6. ジャコメッティ≪歩く男≫1億4130万ドル(2015年)彫刻作品最高価格
7. 斉白石(チ・バイシ)≪山水十二屏≫1億4100万ドル(2017年)アジア人最高価格
8. ムンク≪叫び≫1億1990万ドル(2012年)
9. ピカソ≪花かごを持つ少女≫1億1500万ドル(2018年)
10. モネ≪積み藁≫1億1070万ドル(2019年)
次点. バスキア≪無題≫1億1050万ドル(2017年)日本人による落札最高価格

 

2013年初時点のトップだったムンクの≪叫び≫は、現在は8位に後退しました。
2016年初時点のトップ3はすべて10位以内に残っていますが、全体では10作品中半数にあたる5作品が、それ以降の落札となっています。
トップ10のうち複数の作品でランキング入りしているのはピカソとモジリアーニの2人だけです。
日本人コレクターの前澤友作社長が落札したバスキアは、絵画作品だけでカウントすれば10位なのですが、美術品全体では惜しくもトップ10入りを逃しました。
そのバスキアに代わって、2019年に新たにトップ10に入ったのがモネ≪積み藁≫でした。

 

日本人作家の美術品落札記録は?

では、われらが日本人作家の作品はいったいいくらで落札されているのでしょうか。
2019年のニュースとして、奈良美智の≪ナイフ・ビハインド・バック≫が2490万ドルで落札されて、日本人作家作品の落札記録を更新したことがあげられます。
過去の記録は、2008年の村上隆の彫刻≪マイ・ロンサム・カウボーイ≫で1516万ドルでしたから、大幅な価格上昇になります。
絵画作品だけで言えば、それまでの最高記録は白髪一雄≪高尾≫で1034万ドルでしたから、2倍以上の高値がつきました。
ちなみに、奈良美智、村上隆、白髪一雄の後には、藤田嗣治≪誕生日パーティ≫937万ドル、草間彌生≪Interminable Net #4≫796万ドルが続きます(いずれも手数料込み価格)。
以上の日本人作家の5作品は、村上隆を除きすべて2018年以降に落札されたものです。美術品の落札価格は年々高くなっているのです。

 

美術品オークション落札記録(日本人作家・2020年2月現在)
1. 奈良美智≪ナイフ・ビハインド・バック≫2490万ドル(2019年)存命作家最高価格
2. 村上隆≪マイ・ロンサム・カウボーイ≫1516万ドル(2008年)彫刻作品最高価格
3. 白髪一雄≪高尾≫1034万ドル(2018年)
4. 藤田嗣治≪誕生日パーティ≫937万ドル(2018年)
5. 草間彌生≪無限の網 #4≫796万ドル(2019年)

 

 

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