アートコラム Column

カタログ無料進呈 作家作品情報を掲載したカタログを無料進呈中です。
メールマガジン配信 メルマガ限定の特別案内などを配信中。登録・購読は無料です。 イヌメポストカードプレゼント中!

パリ通信

Vol. 1 パリ再訪 セーヌ川から

Revoir Paris, Vue de la Seine

第1回photo1 
 野外で過ごすのに気持の良い季節になりました。セーヌ川に浮かぶペニッシュ(川船)のデッキで、のんびり日光浴をする人たちの姿が目につきます。仲間とテーブルを囲んで食事をしたり,釣りをしたり。そこが住空間にもなっている個人所有のぺニッシュはどれも個性豊かです。赤や黒、ブルーマリンの好みの色にペイントし、旗を立て、小さなガーデンスペースまであったりと、住む人の暮らしぶりが伺えます。お洒落な船上カフェやレストランなどもずいぶん増えました。半日あるいは数時間、船を借りきってのレセプションや結婚パーティーなどのプライヴェートな催しをすることもあります。この日もグルネル橋のたもとに横づけになったボッティチェリに、軽装の人びとが楽しげにお喋りをしながら乗り込んで行く姿が見えました。カクテル(パーティー)でもあるのでしょうか?凍えるように寒かった冬の季節は、寂しげに水辺にひっそりとたたずむ白鳥のようだったボッティチェリ。今日は太陽の光を燦々と浴びて、本来の《セーヌの貴婦人》の顔をとりもどしたかのようです!ボッティチェリはセーヌ川を往来する白いエレガントな中型船の名前です。そして彼女の近くにぴったりとくっつくように停泊しているのが、どっしりと男性的な風貌のルノワール。この呼び名、だれが付けたのか芸術を愛するフランス国にぴったりの名まえだと思いませんか?

 さて、セーヌ川と云えば忘れてならないのが遊覧船の《バトームッシュ(Bateaux-Mouches)》です。他にもライバル船のバトーパリジャンとかいろいろありますが、バトームッシュが創業1949年と最も歴史が古くそのシェア数も最大と云われています。セーヌ遊覧船の歴史をさかのぼれば1900年のパリ万博、パリ文化が最高に花開いたベルエポックの時代です。 万博に集った各国の賓客を乗せ、遊覧船の先駆けとなる一艘のスチームボートが初めてセーヌ川を遊覧するのです。万博が終わると、 バトームッシュの創業者 J.ブリュリエルは、この時のボートを購入することを思いつきます。それから《J.S.ムッシュ》なる架空の人物像を作り上げ(!)彼をバトームッシュの発案者に仕立て、独自のプロモーションを展開して大成功。それが今日のカンパニーバトームッシュ社の誕生になったと云われています(フランスにはしばしばこう云った奇才が存在しますね)。バトームッシュを文字通り訳すと「ハエ(昆虫の)ボート」と言う意味ですが、このムッシュはもちろん虫のハエのことではなく 当時船を造っていたのがリヨンのムッシュ地区にある艇庫であることに由来しているようです。

第1回photo 2 バトームッシュの船体は広くモダンなガラス張り、オープンデッキと天井付きデッキの二階建てで一度に数百人が乗船できます。パリの中心、おヘソ部分にあたるアルマ橋の桟橋が発着場所になっていて、そこから東のサンルイ島、西の自由の女神の塔までパリの最もモニュモンタルな景観を無尽に横断してくれます。セーヌ川が街のほぼ中心部を流れていることから、遊覧ツアーではパリの右岸と左岸の景色を同時に眺めることができるのです。そしてその両岸を結ぶ美しい橋。ポンデザール、ポンヌフ、ミラボー橋、詩に歌われ、絵のモチーフとなり、映画の舞台としてたくさんの芸術家を魅了して来た十余りの橋をくぐり抜けます。それはパリの街と歴史を心地よい風を受けながら一瞬のパノラマで見る希有な時間です。

 私がはじめてバトームッシュに乗ったのは、パリに住み始めてから実に十年余の歳月が過ぎた頃でした。込み入ったメトロの路線図にも慣れ、だいたいの場所ならばもう知っている。そんな風にタカをくくっていた、いわばパリ暮らしの倦怠期に入っていた時期でしょうか。ある日、幼年期をパリで過ごしたという友人と彼の「想い出のパリ」を一緒に再訪する機会が巡って来たのです。さて、どうしようか?どうせなら思いきりトゥ−リスト(観光客)になってみよう!そう思って乗ったバトームッシュ。夏日の終わり、人も少なくほぼ貸し切り状態だった船の甲板の先頭に立つと視界は前方180度、見慣れたはずのパリの街がつぎつぎと眼の前に異様な迫力を持って迫ってきました。それは完璧な均衡の調和、時を経た歴史の圧倒的な存在感。船を降りたとき、「私はもう一度パリを見た」「やはりこの街は格別に美しいのだ」としばらく気持が高揚していたのを覚えています。 アルマ橋から出航した船がサンルイ島まで来ると、一回島の周りをぐるりとUターンし、今度は西のビーハッケム、エッフェル塔の方向へと進んで行きます。幸運なことに、いよいよ陽が暮れはじめるその時あなたの乗った船がちょうど西へと航路をとるならば、一つまた一つ橋をくぐるごとに素晴らしい日没の瞬間を見ることができるでしょう。もっとも、一日に太陽が移動するたび「その時の光の具合によって見え方が違う」と同じカテドラル(大聖堂)をくり返し描いたのは印象派の画家モネでした。パリの街もまた同じ、それぞれの季節、時刻で異なったそれぞれに美しい姿を見せてくれるのでしょう。ビーハッケム橋を過ぎ、自由の女神の背中が見えるともうすぐ終点のミラボー橋です。(文/写真 河村真奈)


河村 真奈

河村 真奈

[ Mana Kawamura ]
多摩美術大学油画・版画専攻卒業後、1992年に渡仏。レンブラント、ゴッホ、印象派の研究で知られる美術史家パスカル・ボナフ氏に師事し、パリ第八大学で博士号前課程DEAを取得。その間ヨーロッパでの生活経験をもとに、旅、美術、食文化などをテーマにした紀行文やフォトエッセイを発表する。2005年日本旅行作家協会主催エッセイ大賞受賞。パリでは日仏児童を対象にした《日本語よみきかせのアトリエ》や美術とフランス語に親しむ文化講座を主催している。2013年よりブリュッケ(翠波画廊)パリスタッフとしても活躍、フランスからアート情報を届けている。

関連リンク

ご購入にお得な3つの特典

  • 特典1
    作品はすべて額装でお届け
    作品に相応しい額を付けていますがご希望があれば交換も可能です。
  • 特典2
    配送時の保険・送料は当画廊が負担
    お客様のもとへ作品が届くまでの費用は一切かかりません。
  • 特典3
    30日以内の返品受付、返品保証
    お部屋に飾って合わない場合は30日以内の返品を受け付けております。

※分割払いをご希望の場合は、10回まで無金利でご利用いただけます。

ご購入・絵画販売について

来店のご案内

ぜひ画廊にお越しいただき、現品をご覧ください。

展示会等に出品中で、作品等が店頭にない場合がございます。
ご希望の作家、作品がございましたら、事前に電話やメールにてお問い合わせください。

アクセス